日本の自動車メーカー・ホンダは今月19日、2021年までに英国にある自動車工場を閉鎖し、主力車シビックの新モデルは北米での生産に切り替え、電気自動車の研究開発と生産は中国と日本に集中させることを明らかにした。八郷隆弘社長は同日の記者会見で、「世界の生産能力の合理的な配置を考えてのことで、最良の選択だ」と述べた。「経済参考報」が伝えた。
英国南部のスウィンドンにあるホンダの自動車工場は、ホンダにとって欧州で唯一の工場でもある。1985年に設立され、従業員は3500人。2018年はシビックを16万台生産し、英国の自動車生産量の約10%を占め、大半は北米地域に輸出された。
アナリストはこのほど、「ホンダの欧州などでの自動車販売が低迷していること、英国の欧州連合(EU)離脱の見通しが不明なこと、世界規模で電気自動車(EV)が急速に発展していること、この3つの要因が、ホンダに世界の生産ネットワークの配置や重点研究開発の方向性の調整を決意するよう促した主な原因だ」と分析している。
現在、米国とアジアがホンダの主力市場だが、昨年の欧州市場でのシェアは1%に満たず、販売量は14万3千台にとどまった。中国と米国ではそれぞれ10%以上のシェアを獲得している。またホンダの世界販売総量に占める欧州の割合は3%に届かない。ホンダは19日に英国工場閉鎖を発表したと同時に、トルコの工場の閉鎖も発表した。この2つの工場はどちらも主にシビックの生産を手がけ、トルコで生産されたシビックは主に中東市場に輸出されている。両工場閉鎖の影響で、ホンダの21年の販売量は現在より6%減少して510万台前後になることが予想される。
ホンダの英国工場閉鎖は、英国が2016年に国民投票でEU離脱を決めて以来、自動車メーカーが英国での生産中止を決定した初めてのケースだ。八郷社長は記者会見で、「ホンダの今回の決定はEU離脱とは無関係」と述べたが、実際には3月29日に合意なし離脱が現実になれば、英国工場で生産した自動車を欧州市場に輸出する際に10%の関税をすぐにも納めなければならなくなる。そうなると欧州市場で厳しい経営状況にあるホンダにとっては弱り目に祟り目だ。
ホンダの撤退が英国政府にとって大きな打撃であることは間違いない。英国のビジネス・エネルギー・産業戦略省のグレッグ・クラーク大臣は今月19日、「ホンダの撤退は英国にとって破壊的な意味のある決定だ。ホンダの決定に大変失望している」と述べた。
ホンダが撤退すると英国で連鎖反応が起き、ホンダに部品を提供してきたメーカーも英国工場閉鎖を検討する可能性がある。また日産自動車も英国での次世代スポーツ用多目的車(SUV)の生産をやめると決定し、トヨタは英国が合意なしEU離脱になれば英国工場での生産をしばらく停止することを検討するとし、ドイツのBMWは4月から英国での小型車ミニの生産を停止すると決定した。パナソニックやソニーといった日本のメーカーが英国にある欧州本部を他の国に次々移している……英国のEU離脱の混乱が経済に与えるマイナス影響がこれから徐々に顕在化することになる。
ドイツのフォルクスワーゲン(VW)のマティアス・ミュラー前社長は以前、「未来はEVにある」と断言した。欧米日の自動車メーカーがここ2年間に発表した未来戦略がこの判断を裏付けているようだ。EVの大量生産は2020年代前半に現実のものになる可能性がある。ここから予想されるのは、これから数年間、自動車産業は多様化競争の時期に入る可能性があるということだ。これまで欧米日の主要メーカーが自動車産業の技術開発や販売競争をリードしてきたが、今ではEVと従来車の間に大きな構造的不一致があり、米国のテスラや中国の比亜迪のような「新参者」の存在感が急速に高まり、EVに投資するベンチャー投資家も機運に乗じて次々登場し、従来型自動車メーカーの優位性を大きく揺るがしている。
中手メーカーのホンダは自動車産業の電動化と自動運転という発展の方向性をしっかり見据え、車載電池の製造コストが安価な中国に目を向けている。25年には中国工場でハイブリッドカーとEVの20車種以上の生産を開始する計画だ。八郷社長は記者会見で、「未来のホンダは中国と日本から欧州にEVを輸出し、欧州市場でホンダブランドをしっかり打ち出していく」と述べた。(編集KS)
「人民網日本語版」2019年2月27日