浙江省杭州市の天目山路と古■路(■は土へんに敦)の交差点に今月18日、バラエティに富むアートが集まる商業施設・天目里がオープン。その1F・B1Fに、1年かけて計画が進められていた中国大陸部1号店となる蔦屋書店が出店している。同書店は、世界一美しい書店と称されている。浙江在線が報じた。
スタッフによると、オープン後しばらくは、入店には予約が必要だという。混雑を避け、来店者に心地よい体験を提供するために、1日3500人限定で、時間帯ごとに予約して入店することになる。
同書店に入ると、巨大な書棚がまず目に飛び込んでくる。そこには、洋書ばかりが並んでいる。書棚の隣は、喫茶店になっており、そこでランチを楽しむことができる。
ウッドカラーがメインの1F店内は、2つのエリアに分かれ、そこに並ぶ書籍はアートがメイン。アート、写真、ファッションなどのジャンルがある。スタッフは取材に対して、「これが蔦屋杭州店のテーマで特色」と説明する。
B1Fは同店の第三エリアで、主に旅行、文学などのジャンルの書籍のほか、日本の手作りアート作品が並んでいる。
また、セーラーの万年筆「SPECIAL NIB」や「長刀研ぎ」、パイロットの万年筆など、日本の各有名ブランドの万年筆も並んでいる。スタッフによると、「一番高価な商品は限定版の万年筆で約5万元(1元は約15.8円)」という。
杭州に合わせたライフスタイルを提案
蔦屋書店は顧客体験を非常に重視している。創業者の増田宗昭氏は、客として来店し、店内を観察するのが好きで、午前中、正午、夜、休日、雨の日、夏の暑い日など、様々な時間帯や天気の日に来る客をじっくり観察して、サラリーマン客のニーズを正確に把握するようにしている。
「本を売るのではなく、ライフスタイルを提案したい」というのが増田氏のビジョンで、「ライフスタイルの提案」がこれまでずっと蔦屋書店のコンセプトとなってきた。
蔦屋書店は場所や状況に応じて、特徴や並べる商品、運営の方向性なども変えている。
例えば、東京にある代官山店は、中年・高齢者をターゲットにしている。これは、日本の社会・市場を客観的に見て設定している方向性だ。また、二子玉川店の店名は「蔦屋家電」で、「ライフスタイルを買う家電店」をコンセプトにしている。
では、杭州店は杭州人のどのようなライフスタイルを提案してくれるのだろうか?
スタッフは「杭州は、歴史がありながらも若い都市で、ここには中国美術学院のほか、西湖、活力に満ちたIT企業などもある。書店のある城西には、浙江大学があり、西へ行くと阿里巴巴(アリババ)の本社がある。さらに、周囲には大象設計やB1OCKのファッションコンセプトショップがある。そのため、『杭州でもっとも創造力が刺激される文化の提案拠点』をコンセプトにしている」と説明する。
1部34万元の限定版書籍が目玉
杭州の蔦屋書店には5万冊以上の書籍が並び、中でも最も多いのがアート系の書籍だ。店員によると、店内には、限定版の書籍もたくさん並んでいる。例えば、安藤忠雄(杭州の良渚村文化芸術センターの設計を手掛けた建築家、プリツカー賞受賞者)のポートフォリオ最新作「ANDO BOX VI」は、安藤忠雄が手がけた建築を自身で撮影した写真のほか、オリジナルドローイング3点が収録されており、限定20部。このポートフォリオは大きさがセパレートエアコンほどあり、蔦屋書店に並ぶのは1部のみ。34万元の価値がある「同店最高級書籍」だ。ただ、同店で最も高価な書籍ではない。
その他のアーティストを見ると、レンゾ・ピアノの限定版書籍もある。スタッフによると、その2万元の限定版書籍が「売れたばかり」という。
スタッフによると、「中国では、蔦屋書店(TSUTAYA BOOKS)とTSUTAYA BOOKSTOREの2ブランドを展開している」ということだ。
蔦屋書店は今後、中国で100店舗を展開する計画で、上海や西安などでの店舗展開に向けて交渉が始まっており、準備が進められている。TSUTAYA BOOKSTOREは蔦屋書店と比べると、規模が小さく、中国で今後、1000店舗展開される計画だ。(編集KN)
「人民網日本語版」2020年10月21日