取材で訪れた青海省では、高原の青い空に白い雲が浮かび、雪山と草原の景色に酔いしれた。いかにして生態環境を保護すると同時に貧困を脱却して豊かになり、産業と地方経済を発展させる道を見つけるかは複雑な課題であり、様々な点を考慮し、選択を行う必要がある。今、同地では、環境に配慮したグリーンな発展理念をガイドラインとし、太陽光発電や太陽熱利用、風力発電などクリーンエネルギーを大規模に発展させ、生産や生活で用いるエネルギーの問題を解決すると同時に、人々を増収へと導き、生態環境改善を促進しており、発展と保護、貧困脱却と生態環境というウィンウィンを実現した。(文/人民日報社記者 申少鉄)
生態環境保護と経済発展は矛盾し対立する関係ではなく、弁証法的には統一された関係にある。産業発展と生態環境保護がうまく相互作用するために重要な前提となるのは、自然の法則を尊重し、生態環境の優位性を十分に発揮した上で、高効率でクリーン、持続可能な資源エネルギー利用を実現することだ。
青海省は青蔵(チベット)高原にあり、標高が高く、空気が薄く、年間を通して日照時間が長いといった特徴があり、太陽エネルギーや風力エネルギー、水力エネルギー資源が非常に豊富だ。こうした大自然の「贈り物」をしっかりと利用し、クリーンエネルギーを発展させれば、尽きることのない財産を生むことができる。
青海省海南蔵(チベット)族自治州の緑色産業発展園は、太陽光発電所エリアの計画面積だけでも609平方キロメートルに及び、現在発電設備の総容量は7000メガワット近い。園内で生産される電力は送電され、直接的な収益を上げている。園内には村の貧困者支援太陽光発電所も複数建設されており、収益の60%が村の集団経済発展に用いられ、40%が公益性雇用への給与支払いに充てられており、貧困者の地元での雇用を支援し、安定した貧困脱却を促進している。
青海省の優位性は生態環境であり、その発展の優位性も生態環境をよりどころとしている。エネルギーや鉱産物など再生不能な資源と比べ、青海省で潜在的な価値が最も高く、開発による利益が最も広範にわたる資源は、実のところ優れた生態環境資源となっている。青海省には雪山や草原、森林、湖沼、荒野、ゴビ砂漠など多くの景観があり、観光業を発展させる上で絶好の地域だ。
例えば、国道109号線が通り、共茶高速道路の出口に位置する海南チベット族自治州共和県廿地郷切扎村は、貧困者支援策で移住した人々が暮らす村で、太陽光発電産業資金と観光による貧困者支援特別資金のおかげで、ホテルやレストラン、スーパーなどのインフラが建設され、美しい景色で観光業を発展させ、貧困を脱却して豊かになりつつある。
生態環境をよりどころとして発展してきたクリーン産業は、人々を幸せにする一方で、生態環境面での優位性を引き続き強化し、生態環境も改善した。共和県塔拉灘太陽光発電産業園内には、一面に設置された太陽光発電パネルの下に緑の草が生い茂り、羊の群れが太陽光発電パネルの下で悠然と草を食んでいる。かつて塔拉灘は一面の荒野で、風と砂ぼこりがひどく、土地の砂漠化が深刻なため、放牧をすることができなかった。しかし太陽光発電所が建設されてからは、敷設された太陽光発電パネルが風と日差しをある程度遮ることができるようになり、草原の生態環境が効果的に回復した。多くの村民たちが太陽光発電園内で羊を放牧し、かなりの付加収益を得られるようになり、暮らし向きも良くなる兆しが出てきた。それと同時に、太陽光発電産業が大きく発展したことで、人々はクリーンな電気を使うことができるようになり、石炭や燃料油の燃焼による汚染物質排出が大幅に減少した。
他にも例を挙げると、三江源地区の中心エリアにある瑪多県では、以前は地元の人々はディーゼル発電に頼るしかなく、冬の暖房は石炭に頼らざるを得なかった。国家電網は瑪多県に4.4メガワット貧困者支援太陽光発電所を建設するよう積極的に推進し、現地政府はクリーンな電力による石炭代替を強力に推し進め、汚染物質排出量を低減。三江源には常に青空が広がり、清らかな水が流れるようになった。
こうした例から分かる通り、貧困脱却の難関攻略であれ、地方経済の発展であれ、決して生態環境を犠牲にすることを代価としてはならず、その土地に合わせて発展のための資源を総合的に開発し、産業発展と生態環境保護の両立に努めるべきだ。環境に配慮したグリーンな発展を目指し、豊かな自然を守りながら経済をさらに発展させることで、人々の獲得感を絶えず高めていくことができるに違いない。(編集AK)
「人民網日本語版」2020年12月2日