海抜が高く気候は寒冷だが、日々の暮らしはあたたかい放牧地域

人民網日本語版 2020年11月27日16:44

ヤクミルクを絞る遊牧民。(李昌禹・人民日報)

8月、西蔵(チベット)自治区那曲市嘉黎県麦地■郷(■は上と下が上下に組み合わさった字)では、外を歩くときにもう綿入れの上着を羽織らなければならないほどの寒さだった。ここの平均海抜は5100メートル以上あり、海抜の高い寒冷な気候の放牧地域だ。海抜が最も高い凱熱村の牧場は5280メートルに達するという。真紅の民族衣装「蔵袍」に身を包み、つばの広いフェルト帽子をかぶった凱熱村の蔵族(チベット族)男性の倉巴さんは意気揚々としていた。村の合作社からの配当のほか、自分でやっているちょっとした商売とアルバイト、政府が支給する草原生態補助奨励などの収入があり、昨年の一家の総収入は10万元(1元は約15.9円)に迫ったからだ。しかし2015年までは、一家の一人あたり年収は2千元ほどしかなく、貧困世帯に分類登録されていた。

変化は麦地■郷が実施した「一村一合」の貧困脱却促進の政策によって訪れた。2015年、巴桑次仁さんが麦地■郷党委員会の書記に就任した当時、郷全体で貧困世帯に分類登録された世帯は380戸あり、世帯員は1900人に上り、郷全体の貧困率は37%にも達していた。牧畜民はあちこちでばらばらに放牧するのを主な生業とし、収入が極めて少なかった。巴桑次仁さんは経営を集約し、産業を発展させるため、一方で各村が経済協力組織を作るよう奨励・支援し、また一方で郷で職業訓練や自動車運転講習会などを開催し、牧畜民の技能訓練を実施した。数年が経ち、郷全体のすべての村で牧場合作社が設立され、さらに牛糞加工場、家政サービスセンター、ガソリンスタンドなど20の経済協力組織が相次いで設立された。

2017年、凱熱牧場合作社が設立され、倉巴さんは一家で飼っていたヤク18頭をすべて合作社に投資し、妻も合作社で働き始めた。それから2年が経ち、倉巴さん一家は牧場から1万2800元の配当収入を得ただけでなく、小さな母牛一頭も配給された。自分で放牧する必要がなくなったため、倉巴さんは空いた時間でアルバイトに出られるようになった。この2年間、収入は一気に倍増した。今では、倉巴さんと同じように、麦地■郷の貧困世帯がすべて貧困から脱却している。

ここ数年、那曲市はこの地域が抱える海抜が高い、自然環境が厳しい、経済的基盤が脆弱、産業構造が画一的といった問題に焦点を当て、牧畜業の資源がもつ優位性に立脚して、県(区)で牧畜業開発会社を設立し、市内でリーディングカンパニーを育成し、「リーディングカンパニー+県の牧畜業会社+合作社組織+貧困世帯」の収益連携メカニズムを構築し、市から県へ、郷へ、村へ、世帯へと広がる牧畜業開発局面を形成し、貧困者支援の成果を高めた。

那曲市色尼区にある西蔵嘎爾徳生態畜牧産業発展有限公司は、牧畜業のリーディングカンパニーだ。記者が海抜4500メートルの嘎尔德高原の有機牧畜産業モデル基地を取材した時、近くの達薩郷の6つの村の合作社で責任者を務める嘎達さんがバンを運転して、ヤクのミルクを運んできた。同基地の乳製品鑑定士の扎巴羅布さんがチェックし、嘎達さんが運んできたミル約65キログラムは品質検査に合格し、すべて引き取られた。嘎達さんは、「以前は牧場が統合されておらず、皆ばらばらに経営を行い、自分が生産したミルクを自分で貯蔵し販売するのはとても大変だった。今では、基地が牧畜民たちに保冷ステンレスタンクを提供してくれるので、輸送は便利になったし、販路も心配しなくてよくなり、牧畜民の生産に対する積極性が大幅に向上した」と話した。嘎爾德基地の生産現場を訪れると、ヨーグルト、ヤクバター、発酵食品などさまざまな乳製品が所狭しと並んでいた。基地の責任者の明加塔さんの説明によると、同基地は2018年1月に運営を開始し、これまでに貧困村76ヶ所の貧困世帯812世帯が基地にミルクを供給し、肥料を販売し、草原を一時的に貸し出しし、また基地で働くようになり、登録された貧困世帯は751万2300元の収益を得た。

那曲市委員会の敖劉全書記は、「数年にわたる持続的な推進により、那曲市の農業農牧畜業合作社は1540ヶ所に上り、農民・牧畜民7万3500世代の32万2900人に影響が及ぶようになった。2019年の営業収入は総額3億6600万元に達し、配当は1億9900万元になり、延べ1万9100人の農民・牧畜民が近くの地元で働けるようになり、延べ8万2700人が賃金や配当などで1億2100万の収入増加を達成し、一人あたりの増加額は1467元だった」と説明した。

「自力更生し、困難に立ち向かい奮闘し、苦しい仕事もいとわない」。これは現地の貧困者支援に携わる幹部の掲げるスローガンであり、貧困から脱却するためには必ず通らなければならない道でもある。(編集KS)

「人民網日本語版」2020年11月27日

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