人民網日本語版>>社会・生活

地震、トンネル、プラハの街並み?IT素人が見に行くビッグデータ貴州

人民網日本語版 2021年05月11日10:23

貴州省は今、ビッグデータを中心としたデータ産業を主軸に経済振興を進めている。中でも、貴陽市と安順市を跨ぐ広大な土地に建設が進む貴安新区は、国家級新区に指定され、大がかりな開発が進む。

内陸部に位置し、経済発展が遅れ、貧困率が高い地域というイメージが強かった貴州。その貴州がビッグデータをキーワードに開発を進めていることは知ってはいたが、貴州とビッグデータをうまく結びつけることができずにいた。なぜ、経済発展が立ち遅れた貴州で最先端のビッグデータによる経済振興が進んでいるのか。そんな問いを胸に、4月末、「中国有約 A Date with China」取材活動で貴州省の貴安新区を訪れた。日々ITの恩恵には浴していても技術的なことには疎い記者が、ビッグデータ貴州をIT素人目線でリポートする。

国家ビッグデータ(貴州)総合試験区展示センター紹介動画で示された「ビッグデータ貴州」の文字(撮影・勝又あや子)

■地震が少ない

「貴州は地震が少ないからですよ」。貴安新区の開発状況を説明する担当者に、なぜ貴州にビッグデータセンターが次々と設立されているのかという疑問をぶつけてみると、開口一番、こんな答えが返ってきた。

確かに、貴州省は地震が少ない。貴州省地震局の専門家によると、これまで700年近くの間に、マグニチュード7クラスの地震は一度も起こっていないという。また地震情報資詢網によると、貴州省の多くはカルスト地形で、地質的な特徴として地震が発生しにくいのだという。

貴安新区を訪ねた日は4月下旬というのに肌寒く、コートが必要なほどだった。貴州は高地に位置し、夏の平均気温が約25度、冬の平均気温が約10度と、過ごしやすい気候。大量の熱を発するデータセンターにとっては電気代を大きく節約できる。さらに、貴州は水資源が豊富で、水力発電所が多く、電気料金的に見てもメリットが大きい。そして経済発展があまり進んでいないこともあり、土地代や人件費も比較的安価だ。

国のサポートも大きい。貴安新区は2014年、中国全土で8番目に認められた国家級新区だ。中国全土の国家級新区は計19ヶ所で、古くは上海の浦東、最近では河北省の雄安新区が記憶に新しい。国務院が認可し、国の重大な発展と改革開放任務を担う国家戦略レベルの総合機能エリアであり、国が政策や資金などの面で支援する。進出企業に対する優遇措置も手厚い。

■小高い山にトンネル

こうしたメリットに惹かれて、アップルや騰訊(テンセント)、華為(ファーウェイ)、中国の三大移動通信キャリアなど多くの企業がこの地に進出し、データセンターを建設している。

アップルは貴安新区にiCloud貴安データセンターを設置。ここはアップル社が米国、欧州に次いで3番目に設立したデータセンターで、ユーザーにiCloudサービスを提供する。私がiPhoneで撮った写真や動画のデータは貴安にストレージされるというわけだ。そう考えると、遠く離れた貴安が俄然近く感じられる。

そして貴安新区でひときわ目を引く存在が、テンセント貴安七星データセンターだ。今回の取材では実際に訪れることができなかったが、その外観は実にユニーク。なんと山を一つそのまま利用して作られているのだ。小高い山に5本のトンネルを掘り、そのトンネル内にサーバーを置く。総面積はサッカーコート4面ほどの広さがある。2020年5月に第1期プロジェクトが試験運用を開始。計画では、ここに30万台のサーバーが置かれる予定だという。世界には防空壕跡を利用したユニークなデータセンターがあるが、このデータセンターもユニークさでは引けを取らないのではないだろうか。

貴安新区の説明動画で紹介されたテンセント貴安七星データセンター(撮影・勝又あや子)

テンセントの貴州エリア担当者が以前メディアに語ったところによると、「データセンターにとっては、地震帯の上にないことや台風などの自然災害がないことが非常に優れた自然条件となる。また、データセンターはマシンが発する熱を冷却するための条件が求められるが、貴安新区は年間の平均気温が比較的低く、冷却効率が高い」という。

■山裾にプラハの街並みが出現

テンセントクラウド貴安七星データセンターと通りを挟んだ向かい側には、貴安ファーウェイクラウドデータセンターの建設が着々と進んでいた。完成すれば、170ヶ国のデータ管理がここで行われる予定だ。

ファーウェイクラウドデータセンターの大きな特徴が、プラハの街並みを再現したその外観だ。テンセントは広東省東莞市にも欧州の街並みを思わせる巨大な施設を建設し、研究開発などの機能を移転させている。現在建設中のデータセンターでも、山沿いにプラハの街並みを模した建物が並び、一見テーマパークのようにも見える。

プラハの街並みを模して建設が進む貴安ファーウェイクラウドデータセンター。右奥に山を丸ごと利用した施設の建設現場が見える(撮影・勝又あや子)

実は、ファーウェイのクラウドデータセンターでも、小さな山を一つそのまま利用した施設の建設が進んでいる。貴安新区には、小高い丘や小さな山が多い。大量のサーバーを設置し、熱冷却ニーズの高いデータセンターには、こうした地形がかえって有利に働いているのかもしれない。貴安新区を実際に訪れてみて、貴州とビッグデータの関係が素人なりに納得できたような気がした。(文・勝又あや子)

「人民網日本語版」2021年5月11日

関連記事

おすすめ写真

コメント

ランキング