世界に「中国」PRする五輪の表彰式用ユニフォームをデザインしたティン・イップ氏

人民網日本語版 2021年08月31日09:48

服飾デザイナーである葉錦添(ティン・イップ)氏が衣装、美術を担当した武侠映画「臥虎蔵龍(グリーン・デスティニー)」は、第73回アカデミー賞で最優秀美術デザイン賞を受賞した。ティン・イップ氏は、さまざまなアートのジャンルで実績をあげており、その肩書も少なくない。そんなティン・イップ氏は、先ごろ開催された東京2020五輪で中国代表選手の表彰式用ユニフォームのデザインを手がけた。新華社が報じた。

ティン・イップ氏が約3年かけて仕上げたこの表彰式用ユニフォームは、中国の人々から「龍服」と呼ばれている。

東京五輪の金メダリスト第一号となった射撃女子の楊倩選手が「龍服」を着て表彰台に上がると、ネット上の画面はネットユーザーから寄せられた称賛の声で埋め尽くされた。その後、表彰台は、各国が表彰式用ユニフォームを披露する「ランウェイ」と化し、「龍服」もそこで幾度となくスポットライトを浴びた。赤と白のそのユニフォームは、ティン・イップ氏の狙い通り、「インパクトがとても強いのに、とてもシンプル」な仕上がりとなっている。

「龍服」をチェックするティン・イップ氏(資料写真)。

「五輪は国境のない人類の祭典。中国はどのように自分を表現すればいいのだろう?」約3年前、こうして自分に問いかけながら、ティン・イップ氏は表彰式用ユニフォームのデザインの旅をスタートさせた。

ティン・イップ氏は様々なデザインの方向性を考えたという。スポーツウエアであるため、必ず体にフィットさせ、ウエアと体の物理的関係を十分に考慮しなければならない。「しかし、それら物理的関係のほかにも、精神的な要素を加える必要があるというのが、中国の独特な部分だと思っている」とティン・イップ氏。そして、「中国カンフーは、単なる武術ではなく、徳や義侠の精神も説いている」と語る。

「龍服」のデザインのスケッチをするティン・イップ氏(資料写真)。

いろんな国の五輪のユニフォームのデザイン、柄、色などをじっくりと研究したうえで、ティン・イップ氏は、そのデザインの方向性を、「中国らしさを表現し、現代の中国人の人柄、包容度、スポーツマンシップなどの要素を反映させて、内面の美しさを伝える」と定めた。

「グリーン・デスティニー」やドラマ「大明宮詞」、アクション映画「赤壁(レッドクリフ)」など、ティン・イップ氏が手がけた作品の各シーンは型にはまらないデザインながら、様々な変化を見せつつも、そこには東洋の精神が込められていた。

「大明宮詞」の撮影中に女優の衣装をチェックするティン・イップ氏(写真左、資料写真)。

五輪の表彰式用ユニフォームは中国の伝統的なスタンドカラーの立ち襟タイプのデザインで、立ち襟の赤いラインがチャックに沿ってへその下あたりまで伸びている。そこには、中国カンフーの「気を丹田(へその下の下腹部)にためる」という精神が込められている。また、白を基調にしたユニフォームにすることで、赤がより一層際立つようになっており、空白の部分を敢えて設ける「留白」という中国の芸術における知恵を活用している。またユニフォーム全体は体が上に向かって伸びていくようなデザインとなっており、「白がメインで、上の幅が広く、下にいくほど絞られているため、足が細長く見える。また、腰のラインが美しく、肩ががっしりと見え、落ち着いてどっしりとしていて、迫力を感じられる」仕上りとなっている。

中国の選手が表彰台に次々に上がるたびに、ティン・イップ氏は「龍服」の視覚効果をチェック。「エネルギッシュな、湧き上がるようなパワーを感じることができ、いい出来栄えだったと思えた」と、思い通りの仕上がりになったことを実感したという。

そして「龍服」のデザインを通じて、世界に中国の物語をPRすることもできたとし、「科学的で、文化的な仕上がりにして、見る人の印象に残る感じにしたかった」と話すティン・イップ氏は、中国文化について、「内面的な無形の力を秘め、芸術作品にすると無限の可能性があり、尽きることなきアイデアを生み出してくれる」との見方を示した。(編集KN)

「人民網日本語版」2021年8月31日

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