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2021年の雇用情勢がどうだったかを考察するため、北京大学は同年6月に大学卒業生を対象にアンケート調査を実施した。中国の東部、中部、西部の19省(区・市)の大学34校から回答が寄せられ、回答者は2万人を超えた。回答の統計をまとめた結果、21年の大卒者の雇用情勢は全体として安定していたことがわかった。(文:岳昌君・北京大学教育経済研究所教授、博士課程指導教員)
21年は「就職を急がない」考えがやや増加
21年の大卒者全体の就職率を見ると、新型コロナウイルス感染症発生前の19年とそれほど変わらず、進路の構成も19年とほぼ一致し、各種企業・機関、進学、出国・出境、起業、自由業、その他のフレキシブルワークの割合に大幅な変化はなかった。このうち企業・機関に就職する割合は19年より5.3ポイント(p)低下の32.1%。高等教育は人材プールの役割が目立つようになり、進学率は19年比4p上昇の29.3%。自由業の割合が19年比0.8p上昇とやや上昇し、起業の割合はほぼ変わらず、出国・出境とその他のフレキシブルワークの割合は19年よりやや低下した。
またデータから、21年は「就職を急がない」、「就職を先延ばしする」、「就職をしたがらない」といった考え方をする人がやや増加し、大卒者の7.9%が「就職せず進学を検討中」または「就職を見送る」という道を選び、19年より1.8p増加した。こうした大卒者が積極的に就職する道を選択すれば、全体の就職率はさらに上昇するだろう。
卒業後の進路には学歴による明らかな差がある。修士課程と博士課程の修了者は企業・機関への就職における優位性が明らかで、修士の割合は64.5%、博士の割合は54.6%に達した。大学院生の募集定員が拡大した影響を受けて、四年制大学卒業生の進学率は35.3%となり、優位性が目立った。短大・高専の卒業生は起業、自由業、フレキシブルワークの割合が他の学歴の卒業生を大きく上回り、合計で24.0%に達した。
学歴が高いほど収入は多くなる
客観的な収入データが映し出す雇用の質を見ると、人的資本の価値は雇用市場で効果的に発揮されており、学歴が高いほど収入は多くなる。21年の初任給(月収ベース)の平均は博士課程修了者が1万4823元(1元は約18.2円)、修士課程修了者が1万113元、四年制大学卒業生が5825元、短大・高専卒業生が3910元となり、中央値は博士が1万5千元、修士が9千元、四大が5千元、短大・高専が3500元だった。各学歴の卒業生の平均収入はいずれも感染症発生前の19年より増加し、雇用の質が下がらなかっただけでなく、安定さの中で向上したことがうかがえる。
初任給には学校の種類、学科、就職するエリアによって明らかな差が見られた。学校の種類別に見ると、一流大学建設校の初任給が最高で1万827元に達し、次は一流学科建設校で7346元、3位は一般の四年制大学で6043元。学科別に見ると、工学が8341元、理学が7909元、学際的学科が7838元で上位3位を占めた。大学出願の段階で受験生に人気のある経済学と管理学は給与の面では特別な優位性があるわけではなく、ここから各学科の卒業生に等しく市場ニーズがあることがわかる。
業界の分布を見ると、特定の業界の雇用集中度が高いという特徴が引き続き存在し、経済のモデル転換・発展と産業構造調整により業界別の雇用の割合の順位に大きな変化が見られた。21年は教育、製造業、情報伝達・ソフトウェア・情報技術(IT)サービス業、金融業、科学研究・技術サービスが大きな割合を占める5つの業界になり、教育は15.1%、製造は14.5%、情報は13.1%、金融は8.5%、科学は7.4%を占め、合計58.6%になった。19年と比較すると、教育はトップの座をキープし、製造業は3位から2位へ、IT業は2位から3位へと順位が入れ替わり、金融業は引き続き4位、科学研究・技術サービスは建築業に代わって5位に浮上した。(編集KS)
「人民網日本語版」2022年1月5日