今年も全国両会(全国人民代表大会・中国人民政治協商会議)の季節がやって来た。両会では全国人民代表大会の代表や、全国人民政治協商会議の委員たちが、懸命にその職を全うし、末端の人々が考えていることや希望していることを伝えている。代表や委員たちは自らの本職を全うするだけでなく、末端の人々の声を伝える「メガホン」となり、一般庶民を「思いやる存在」となる。
こうした代表や委員たちの努力を、周囲の人々は目に留め、心に刻み付けている。中国航天科工集団第三研究院二三九廠の宋雨彪さん(27)もそんな両会代表の傍らで多くの影響を受けてきた「両会青年」だ。
平凡ではない事業に携わる平凡な人
機械加工職人の宋さんは、大学院で航空・宇宙飛行製造工学を専門に学んだ後、2019年に二三九廠に就職し、現在勤続3年目を迎えている。
宋さんは取材に対して、「二三九廠で働くようになってから、戴先輩から新しい技術や設備、技法といった機械加工や工学応用に関する知識を教えてもらうようになった」とし、就職したばかりの頃を振り返り、「最初のうちは、作業の各方面におけるプロセスや技術のことをよく分かっていなかったので、戴先輩が親切に指導し、受け入れてくれた。そして皆を率いて共に成長し、共に新しい技術や材料の難関を攻略させてくれた」と語った。
宋雨彪さん(写真右)と戴天方さん(写真左、撮影・袁蒙)。
宋さんの話の中に出てくる「戴先輩」とは、二三九廠のデジタル制御・フライス盤切削の首席技師である戴天方さん(52)のことだ。デジタル制御・加工に携わって33年になる戴さんは、1986年に技工学校に進学して専門的なトレーニングを受け、機械加工を専門に学び、1989年に卒業すると、二三九廠に入社した。19歳の時から、フライス盤を使う業務に携わるようになった戴さんは、先輩から技術や知識を学んだ後、異なる分野であるデジタル制御設備も研究し始め、たゆまぬ努力を通じて、技術者から「大国の職人」へと成長していった。
仕事中の戴天方さん(写真右、写真提供・取材対応者)。
宋さんは、「普段、工場では戴先輩と呼んでいるが、重大な問題に直面した時などは、戴師匠と呼んでいる。難題に直面した時は、戴先輩でないと解決できない。だから、厄介な問題に直面した時は、『戴師匠』を呼ぶ。彼はまさに救世主というべき存在だから」と話す。
中国の宇宙事業発展の過程においては、数世代の人々が風雨をものともせず前進を続け、必死に奮闘して、これまでの「追走」から、「並走」へと進歩し、現在では一部の分野は「先頭を走る」ようになっている。宇宙事業に携わる戴さんは、「中国の宇宙事業には、『宇宙事業の伝統的精神』と『両弾一星(核技術と宇宙技術の同時開発プロジェクト)の精神』、『有人宇宙飛行精神』の3大精神がある。これらの精神が私たちにおのずと力を与えてくれて、心の支えとなってくれている。宇宙事業にサービスを提供する人も含めて、私たち宇宙事業に携わる人々は皆、平凡な人に過ぎない。ただ単に平凡ではない事業に携わっているだけ」とその誇りを語った。
技能人材の育成に注目
工場で働く仲間を安心させてくれる存在である戴さんには、全国人民代表大会の代表というもう一つの顔がある。彼はこのことについて、「代表になることは、信頼の証であると同時に、試練でもある」と話す。
戴さんは取材に対して、「2018年に、光栄にも全国人民代表大会の代表に選ばれたことは、私にとっては新たな試練となった。代表になる前は、自分の仕事や生活のことを中心に考えていた。しかし、今は肩書が一つ増えて、仕事や生活の中で、代表としての意識をもって、問題を見つけ、一般の人々の声に耳を傾けなければならない」と語る。