急増する高齢者犯罪が日本の社会の不安要素に (2)
犯罪の主な原因は「生活困窮」と「孤独」
ある研究によると、日本で高齢者の犯罪が増加している主な原因は、「経済」にあるという。年金を受給できなかったり、年金では生計を立てられなかったりする高齢者が、スーパーで食品などを万引きするのだ。警視庁の調査によると、東京都内で2012年にあった万引きで、高齢者の摘発者のうち無職が72.7%を占め、被害品のうち食料品が70.2%を占めた。生活に困窮する高齢者の中には、刑務所の中なら食事にも困らず、友人もできると、入所するために万引きを働く人さえいるという。一方、高齢者の犯罪の増加のもう1つの原因は「孤独」だ。孤独な高齢者は世話をしてくれる人や問題に直面した時に聞き手になってくれる人、頼れる人がいないのだ。
高齢者犯罪を研究する慶応大学の太田達也教授が警察庁と協力して、高齢犯罪者1万人を対象に同じ調査をしたところ、強盗犯の63%、詐欺犯の60%、殺人犯の43%が「ほとんど子どもと接触がない」と回答する調査結果が出たという。また、内閣府が子どもと別居している60歳以上の高齢者に「子どもとの接触頻度」を調査したところ、2.6%が「ほとんど接触がない」と答えた。また、隣人との関係については、「問題に直面した時に隣人に助けを求める」と答えたのはわずか17%で、「隣人と毎日おしゃべりをする」と答えたのも22.7%と、隣人との関係も希薄になっていることが分かっている。
助けがなく、絶望した高齢者が、犯罪に手を染めるようになるのだ。統計によると、犯罪に手を染める高齢者の60-80%が一人暮らしだ。また、高齢者が犯罪に走る要素として、健康や死への恐れ、差別、自尊心を傷付けられたなどを挙げる調査結果もある。ただ、これらの要素が犯罪へとつながることは少なく、高齢者の犯罪の主な原因はやはり「生活困窮」と「孤独」だ。
実際には、この2つの要素には密接な関係がある。家族との関係や社会との関係が日に日に希薄になり、「無縁社会」とよばれる社会で暮らす高齢者は、経済上の問題に直面しても、助け手や聞き手がおらず、万引きをして命をつなぐしかないのだ。もし、家族や社会がサポートできれば、高齢者の犯罪増加に歯止めをかけられるはずだ。そのため、「高齢者の犯罪の最な原因は『生活困窮』というより、『孤独』とったほうが適切だろう」と指摘する日本の学者もいる。
高齢者の犯罪の増加が財政を圧迫
高齢者の犯罪の増加は、日本の社会にとって不安要素となり、治安の悪化にもつながっている。日本はこれまで、社会の治安が良いことで知られてきた。しかし、高齢者の犯罪増加に歯止めをかけることができなければ、この名声にも傷が付くことになるだろう。
そのほか、高齢者の犯罪は財政支出の増加にもつながっている。犯罪発生防止のため、政府は警察の人数を増やしたり、監視カメラを増設したり、刑務所を建設したりしなければならない。さらに、重要なこととして、高齢の犯罪者の65%が、服役中に各種医療を受けなければならない。これらの支出はすべて政府が負担するのだ。
現在、日本の刑務所関連の予算は毎年2000億円を超えている。受刑者1人当たりに250万円の税金が費やされている計算だ。高齢者の犯罪増加が、すでに緊迫している日本の財政の足かせになっていることは想像にたやすい。(編集KN)
「人民網日本語版」2013年8月29日