日本の長崎県平戸市はこのほど、来年の夏から同市の観光スポット「懐柔櫓」を開放し、1日1グループ3人まで限定で昔のお殿様の暮らしを体験することもできるようにすると発表した。その少し前には愛媛県大洲市も、来年4月から大洲城を開放し、観光客は馬鎧をまとった馬に乗って入城し、旬のグルメを楽しむことができると発表した。こうしたディープ体験型消費が外国人観光客を引き寄せるというのが、今や日本の地方観光のイノベーションにおける新たな特徴だ。(文:張玉来・南開大学日本研究院副院長。「人民日報」に掲載)
ここ数年、日本の観光産業は猛烈な勢いで発展しており、特にインバウンド市場の増加率が目を引く。2018年には、日本を訪れる外国人観光客は3千万人を突破し、11年の5倍になった。同時に、インバウンド消費が4兆5千億円に上り、半導体部品の輸出額を超える規模になり、観光産業は自動車産業に次ぐ経済の2本目の柱になった。国際観光収支(旅行収支)は長年にわたり日本のサービス貿易収支における最大の赤字項目だったが、今では2兆4千億円の黒字だ。世界ランキングをみると、日本の外国人観光客受入人数は11位、観光関連収入は8位にそれぞれ躍進した。観光産業の急速な発展は、日本経済に新たな活力をもたらしたといえる。
バブル経済が崩壊してからずっと、イノベーションの活力不足が日本経済の発展にとって障害になっており、これは人口減少といった人口構造の変化と密接な関連がある。少子高齢化を背景に、家計消費はますます切り詰められ、内需が力強い復興を遂げることは遅々として進まない。企業は日本国内市場に対して信頼感を抱けず、海外市場の開拓が主導的な流れになっている。人的資本への投資が減り、家庭では可処分所得がさらに減少……そんな中、観光は日本経済の成長を支えると同時に、イノベーションももたらした。
政策レベルでは、日本政府は観光産業の発展を国家戦略として確定し、地方振興の切り札および経済成長の柱と位置付ける。16年には「2020年にインバウンド観光客のべ4千万人突破、消費規模8兆円を達成」との目標を掲げ、「政府一丸、官民一体」国を挙げての観光産業推進というモデルを明確にした。
観光をめぐる環境をみると、日本はここ数年、ビザ(査証)、免税措置、通関手続き、航空ネットワークなど各方面でたくさんのイノベーションや改革を打ち出してきた。最近も新たな措置を打ち出して、言語、ネットワーク、決済、交通、情報など各方面でサービスの充実をはかる。観光地では英語、中国語、韓国語がほぼ標準装備になり、決済方法でも現金偏重の伝統が打ち破られ、キャッシュレス決済が急速に普及し、中国の微信(WeChat)や支付宝(アリペイ)などの利用範囲が拡大を続ける。交通サービスでは、ソフト面とハード面の改善が続くだけでなく、荷物預かりサービスによる「手ぶらで気軽に旅行」などの新たなサービスが次々に登場し、次世代交通サービスシステム「MaaS」は関西地方と北海道でテスト運営が始まった。
観光のコンテンツ及び主体の協力では、一連の歴史的・文化的施設、国立公園などが体験型消費の特色あるブランドを徐々に樹立しつつある。また日本は国際会議の開催やスポーツ観光の発展などを通じた新たな市場の開拓も積極的に進めている。(編集KS)
「人民網日本語版」2019年12月10日