今後30年間 中国経済はどのような挑戦に直面するか

人民網日本語版 2019年12月18日09:14

12月15日、北京大学国家発展研究院が開催した第4回国家発展フォーラムにおいて、同研究院と米シンクタンクのブルッキングス研究所が共同で報告書「中国2049」を発表した。同研究院の黄益平副院長がスピーチを行い、「これからの30年間、中国はコスト水準の急速な上昇、人口高齢化、反グローバリゼーションといった挑戦に直面する。これらの挑戦に対処するカギは、結局のところ、やはり持続的に発展できるか、イノベーションを遂げられるか、産業の高度化を達成できるかどうかにある」と述べた。

同報告書の主な内容は次の通り。

コスト水準が急速上昇

1978年には、中国の国内総生産(GDP)の一人あたり平均は230ドル(1ドルは約109.6円)だった。これはつまり当時の中国は世界で非常に貧しい国の1つだったということだ。よって中国は発展プロセスの中で低コストという優位性を備え、中国が生産する製品には一定の競争力が備わっていた。07年になると、所得水準が大幅に上昇し、平均GDPは2600ドルになったが、なお中低所得の水準だった。昨年はついに1万ドルに迫り、中高所得の水準に達した。中国のコスト水準の上昇は私たちが今日突き当たった非常に大きな問題だ。

人口高齢化

私たちは過去には確かに人口ボーナスがあり、改革開放がスタートしてから従属人口指数が下がり続け、10年前後に底に達して約3分の1になった。現時点での予想では、この割合は49年には3分の2に戻る可能性があり、わかりやすく言えば労働力人口3人で高齢者か子どもを2人養うことになる。そうなれば中国の経済発展に多くの新たな挑戦をもたらし、特に消費ニーズ、労働力の供給、貯蓄の供給、社会保障システムの要求に影響すると予想される。これほど大きな挑戦は、過去にはみられなかったものだ。

反グローバリゼーションの政策または思考トレンド

第二次世界大戦以降、グローバル市場では実際の関税率が低下を続けた。ただ残念なことに、ここ3年間は市場の開放レベルが急速に低下している。未来がどうなるか、それにはなお大きな不確定性が存在する。中国はグローバル化の受益者の1人だが、未来のグローバルファイナンス、国際経済システムがそれほど開放的でなくなれば、私たちは新たな圧力にさらされることになる。

環境と炭素排出の圧力

中国経済は未来において、環境問題や炭素排出問題といったいくつかの挑戦に直面することも予想される。未来にこうした問題にどのように対処するか。客観的に言えば、私たちが今突き当たっている問題は、環境保護政策と炭素排出政策が今や中国経済の今後の成長を決定するだけでなく、気候変動とグローバル経済環境にも大きな影響を与える可能性があるものになっているということだ。

年金資金の不足

高齢化が私たちの直面しなければならないまったく新しい挑戦になる可能性があり、高齢化の問題において最も対処が難しいと思われるのは年金資金の不足だ。さきに述べた従属人口指数が3分の1から3分の2に上昇するということは、高齢者がますます多くなり、なおかつ私たちの将来の寿命がますます長くなり、高齢者人口が中国社会に占める割合が上昇を続け、非常に多くの年金資金が必要になるということを意味する。私たちにはいろいろな方法が考えられるが、おそらく1つの方向性だけは変えられない。それはマクロレベルの課税が未来には上昇こそすれ、低下することはないという可能性だ。養わなければならない人口がどんどん増えるからだ。

ロボットが人間に代わる

労働力の供給という角度からみると、この問題はそれほど悲観的ではないともいえる。18年から49年にかけて、中国の労働力人口は1億7千万人から2億6千万人減少するが、ロボットと人工知能(AI)が2億-3億3千万人分の人間の代わりになるという。豊かになる前に老いるという問題に直面するが、私たちはインダストリー4.0の歩みに追いつけば、労働力人口の供給減少問題に対処できるかもしれない。もちろんこうした代替可能性は業界によって非常に大きな開きがある。代替が比較的容易なのは農業、製造業、交通輸送、倉庫・貯蔵などで、比較的難しいのは教育、科学研究、サービス産業、衛生、社会保障、社会福祉などだ。自分の働く業界がロボットに容易に取って代わられそうなら、人に先んじてチャンスをつかまえなければならない。

都市化率は上昇が待たれる

人口高齢化が全体的な消費ニーズを弱めるが、現在の状況をみると都市部住民の平均消費額は農村部平均のおよそ2倍から3倍になる。現在の農民の一部が都市部住民になることができれば、消費がより大幅に発展することになる。私たちが都市化率を今日の56%から30年後に本当に80%に引き上げることができれば、中国の消費は引き続き健全な成長を維持し、人口高齢化がもたらす影響を完全に相殺することができる。

イノベーションは低いレベル 科学研究水準は持続的な向上推進が必要

こうしたあらゆる挑戦の最後に突き当たるのは、実はイノベーションをめぐる挑戦だ。所得水準とコスト水準の高低は、結局のところ、持続的に発展できるか、イノベーションを遂げられるか、産業の高度化を達成できるかどうかにある。60年には世界に中所得のエコノミーが101あったが、50年後の今も88エコノミーが同じ水準にとどまっている。大部分の国がなかなか上昇できない原因や上昇できた国との違いは何なのかといえば、それは低コストの優位性が失われた後でイノベーションを遂げられたかどうかにある。

中国にとっても同じで、これから持続的に成長できるかどうかは、イノベーションを遂げられるかどうかによって決まる。私たちは一部の総量の指標では非常に速く他国に追いつき、追い越したが、イノベーションの多くは低いレベルにとどまり、応用のイノベーションが比較的多く、基礎研究は比較的少ない。これは中国が依然として中所得国にとどまることの現れでもある。私たちは米国や欧州の科学研究力を全方位的に追いつき追い越せるなどと勝手に想像してはいけない。そのような考え方には現実味がない。必要なことは、今日の科学研究水準を基礎として、その上で引き続き科学研究を前進させていくことだ。(編集KS)

「人民網日本語版」2019年12月18日

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