デジタル人民元の普及拡大がさらに一歩進展した。5月10日、支付宝(アリペイ)アプリはテスト事業に参加するユーザーの一部を対象にデジタル人民元モジュールをリリースし、デジタル人民元による消費、ユーザー間のデジタル人民元の送金・受け取りなどが可能になった。同機能は今はまだ内部テストの段階にあり、テストに参加できないユーザーはまだしばらく体験できないという。第一財経が伝えた。
その一方で、デジタル人民元運営機関は陣容が拡大した。このほど更新された「デジタル人民元アプリ」の利用可能銀行を見ると、すでにデジタル人民元のウォレットをリリースしている国有大手銀行6行のほか、網商銀行(支付宝)が新たに加わって利用できるようになり、公開テストに参加する7行目の商業銀行になった。また微衆銀行(WeBank)も「もうじきリリースする」としている。
業界関係者によると、デジタル人民元が支付宝と連携するということは、デジタル人民元の使用ルートがさらに開拓されて広がるということで、利用シーンが豊富になってより広いユーザー層を取り込めるようになるほか、今後のテストの普及拡大にもプラスになり、デジタル人民元の受け入れ可能レベルを向上させるためのよりよい環境作りにつながるという。
「デジタル人民元に支付宝が参入」のニュースが伝わると、多くの人々が関心を示したが、一部の人は微信(WeChat)、支付宝とデジタル人民元との関係がはっきりしないと考えていることが注目される。中国人民銀行デジタル通貨研究所の穆長春所長も以前、「微信、支付宝、デジタル人民元は同じ次元のものではない」と述べた。
穆氏によると、微信と支付宝は金融のインフラであり、ウォレットだが、デジタル人民元は決済ツールであり、ウォレットの中身だ。電子決済のシーンで、微信と支付宝のようなウォレットの中には商業銀行に預金されたお金が入っている。デジタル人民元が発行されると、人々は引き続き微信、支付宝を通じて支払いができ、ウォレットの中に入った中身に中央銀行発行のデジタル人民元が加わるだけだ。同時に、騰訊(テンセント)やアント・フィナンシャル傘下の商業銀行は運営機関に属するものもであって、デジタル人民元との間に競合関係は存在しないという。
また決済機能を見ると、デジタル人民元は微信、支付宝と異なり、双方向のオフライン決済が可能で、ネットワークがなくてもウォレット同士を近づけることで決済が完了し、決済の利便性と安定性が向上する。
全体としてみると、これまでにデジタル人民元の「2層運営体制」がほぼ確立されている。第1層は中央銀行、第2層は商業銀行、通信キャリア、第三者オンライン決済プラットフォーム企業などで、一般の人のデジタル人民元両替ニーズに対応する。上海交通大学上海高級金融学院の胡捷教授は、「この体制の下では、銀行も決済機関も仲介サービス企業の役割を果たすだけで、これまでの人民元運営のロジックとはある程度の違いがある」と指摘した。
デジタル人民元は登場してからこれまでに多くの都市でテストが行なわれ、今では「10+1」のテスト局面がほぼ構築されている。深セン、蘇州、雄安新区、成都の4ヶ所と北京冬季五輪・パラリンピックの会場などのテストエリアがまず設定され、その後、2020年10月に上海、海南、長沙、西安、青島、大連の6ヶ所が加わった。(編集KS)
「人民網日本語版」2021年5月11日