中国人民銀行(中央銀行)は5月31日、金融機関の外貨流動性管理を強化するために、2021年6月15日より、金融機関の外貨預金準備率を2%引き上げ、これまでの5%から7%に高めることを決定したと発表した。中国新聞社が伝えた。
最近、人民元レートは急速に上昇しており、輸出当局と実体経済の回復に大きな圧力をもたらしている。これと同時に、市場には一部の投機的な見方が出現し、人民元の上昇をあおり、悪意をもって一方的な上昇を操作し、一部のマーケットエンティティがそれにより「バンドワゴン効果」に陥っている。
中国銀行研究院の王有■(品の口が金)シニア研究員は、「特に監督管理当局が相次いで呼びかけを行なった後、上昇の勢いが止まらず、企業の短期決済が増加し、外貨の需給が次第にバランスを失い、人民元の上昇がさらに後押しされた」と述べた。
王氏は続けて、「このタイミングで金融機関の外貨預金準備率を引き上げると、金融機関の外貨保有コストが増大し、関連コストが決済市場に転嫁され、企業の決済のペースが遅れたり期間が延長されたりして、外貨市場が理性的な状態に戻るのを促すことになる」との見方を示した。
中銀証券の管濤チーフエコノミストは、「2021年以来、金融機関の外貨預金が目に見えて増加し、4月末の残高は約1兆ドル(1ドルは約109.5円)に達し、外貨の流動性が上がっている。人民銀行は外貨の預金準備率を2%引き上げることで、約200億ドルの外貨の流動性を凍結することができ、国内市場の外貨の流動性を下げ、国内の外貨の金利を引き上げ、国内の人民元と外貨の金利差を縮小し、スポット決済とフォワード決済を抑制し、中国国内の外貨市場のバランスを促進する上で効果がある」との見方を示した。
管氏は、「今回の政策調整は2つのシグナルを発している。1つ目は、人民銀行は人民元の速すぎる上昇を放っておかないこと、必要な時には思い切った手段を執ることだ」とした。
管氏は、「人民元の対米ドル基準値の昨年5月末から現在までの上昇幅が大きく、引き続き上昇すれば人民元の価値がファンダメンタルズから乖離する可能性がある。新型コロナウイルス感染症が中国経済に与えた影響はまだ完全には消え去っておらず、引き続き大幅上昇すれば、輸出企業に大きなマイナス影響を与える可能性があり、ますます多くの市場関係者が現在の人民元対ドルレートはすでにオーバーシュートしたとの見方を示している」と指摘した。
管氏は、「最近、人民銀行と国家外貨管理局が指導する全国外貨市場自律メカニズムが会議を開催し、その後のプレスリリースでは投機的な人民元の上昇に対する見方を明確なシグナルとして発し、人民銀行は意図をもった市場で人民元の上昇をあおる投資家に警告を発し、必要な時には思い切った手段を執ること、有力な措置を執って対処することを表明した。今回の外貨の預金準備率引き上げは、言ったことは必ず実行するという人民銀行の姿勢を示すものだ」としている。
管氏は、「2つ目は、人民銀行は手を出す時には必ず強い手を出す。これまでの人民銀行の人民元建て預金準備率調整は一般的に1回あたり0.5%だったが、今回の外貨の預金準備率の引き上げ幅は2%と幅が大きく、人民銀行の調整コントロールに向けた決意を明らかにした」と述べた。
管氏は、「今回、人民銀行が外貨リスク準備金などこれまで数年にわたり常用してきた政策は用いず、外貨の預金準備率というこれまであまり用いられなかったツールを運用するのは、人民銀行のツールボックスにはツールがまだたくさんあること、人民銀行が自由に選択できる余地が大きいことを物語っている。今後、外貨市場にはっきりとした投機の動きが見られれば、他のマクロ・プルーデンスのツールが続々と打ち出されるだろう」と強調した。(編集KS)
「人民網日本語版」2021年6月2日