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【中国キーワード】「2023年中央1号文書」が「農業強国」を初提起 発せられたシグナルは何か?

丸わかり!中国キーワード

人民網日本語版 2023年02月17日09:53

2023年の「中央1号文書」が13日に予定通り発表され、前年に引き続いて「三農(農業・農村・農民)」に焦点が当てられた。今年の「中央1号文書」が例年と異なるのは、「農業強国」を初めて提起したことだ。これにはどのような深い意味が込められているのか。中国の「三農」の取り組みにはどんな新しい展開や変化があるのか。

「中央1号文書」とは何か?

「中央1号文書」とは、その名の通り中央政府が毎年発表する1件目の文書のことで、通常は年初に発表される。ここ数年は、「中央1号文書」と言えば、中共中央と国務院の農村問題を重視する姿勢を専門に示す「固有名詞」になっている。

なぜ「三農」に焦点を当てるのか?

1982年から86年まで、中共中央は5年連続で「三農」をテーマとする「中央1号文書」を発表して、農村改革と農村発展の具体的な計画を打ち出した。2004年から22年にかけても、19年連続で「三農」をテーマとする「中央1号文書」を発表した。そして23年にも、前年に続いて「三農」をテーマとする「中央1号文書」を発表した。

「農」はすべてのことに優先する。中央政府が何年も続けて「三農」を「中央1号文書」のテーマとしてきたことは、「三農」問題が中国における最重要事項であることを示している。

「2023年中央1号文書」が「農業強国」を初めて提起

今年の「中央1号文書」は「三農」をめぐる取り組みの重要性を繰り返し述べるとともに、「三農」の安定装置としての役割を改めて強調した。

また、今年の「中央1号文書」では、「国家を強化するにはまず農業を強化しなければならず、農業が強化されて初めて国家は強化される。国情と農業の実情に立脚し、中国の特色を体現し、供給保障・科学技術設備・経営システム・産業の強靱性・競争力のいずれも強い農業強国を建設しなければならない」と提起された。

中国農業科学院農業資源・農業区画研究所の姜文来研究員は、「『農業強国』が『中央1号文書』で初めて重点として提起された。中国は農業大国ではあるが、農業強国ではない。農業強国の建設は農村振興の全面的推進と、現代化建設の不足点の迅速な補強にとってプラスである上、中国の社会主義現代化強国の建設にとっても非常に重要なことだ」と述べた。

22年、中国共産党第20回全国代表大会(第20回党大会)での「第20回党大会報告」では、社会主義現代化強国の全面的完成という目標が提起された。中国がこの目標を実現するためには、農業・農村の不足点を補強し、これに歩調を合わせて農業強国を実現することが必要であるのは言うまでもない。

中国人民大学農業・農村発展学院の汪三貴教授は、「『中央1号文書』が『農業強国』を初めて提起したのは、国際環境も考慮してのことだ。ここ数年、国際情勢が非常に不安定という背景の下、国家の安定と国民の基本的生活を維持する上での農業の重要性がますます顕在化し、食糧問題は重視しなければならない問題となっている。中国は人口大国だが、耕地資源は少なく、食糧の安全に常に注意を払い、国際市場への依存度を徐々に引き下げる必要がある」と指摘した。

「農業強国」はどうやって実現するか?

国務院発展研究センター農村経済研究部の葉興慶部長(研究員)は、「農業強国の建設とは、社会主義現代化強国と釣り合いの取れた農業を作り上げるということにほかならない。そのうち、『強い供給保障』とは、農業は第一の役割として社会経済の発展に十分な農産物を提供すべきであり、強大な生産能力と供給保障能力を備えなければならないことを指す。『強い(科学技術)設備』とは、科学技術の進歩、施設の建設(高い標準の農地、農地の利水・治水などを含む)を通じて、農業の生産効率を高めることを指す。『強い経営システム』とは、新しいタイプの経営主体と社会化されたサービスを発展させ、農業の産業チェーンを伸ばし、小規模農家が産業経営システムにおいて十分な割合で付加価値による収益を享受できるようにすることを指す。『強い産業の強靱性』とは、中国の農業が重大な自然災害、極端な気象変動を乗り切れるようにすること、海外市場の変動に耐えられるようにし、農業の気候に対する強靱性と備蓄調整能力を高めることを指す。『強い競争力』とは、農業の労働生産性を高め、コストを引き下げ、中国の農産物の国際市場での価格競争力を高めることを指す」との見方を示した。

なぜ食糧安全問題がこれほど重要なのか?

昨年以降、地政学的な紛争や極端な気象災害が、世界の食糧安全問題に対する人々の懸念を引き起こしてきた。人口大国である中国は、中長期的に見て、食糧の需給がぎりぎりバランスを保てるという状況が続く。こうしたことから、目下の国際食糧市場の不確実性を前にして、政府は食糧の安全に関心を向けるようになった。今年の「中央1号文書」は昨年に続いて食糧安全問題を文書の冒頭に置き、9つに分かれた内容の一番最初も「食糧と重要農産物の生産安定と供給確保を早急かつ着実に推進」だった。

今年の「中央1号文書」では、「食糧生産に全力で取り組む。具体的には、全国の食糧生産量を6億5千万トン以上で維持し、食糧安全の根幹を全方位的に突き固めることを確保する。これと同時に、大豆・油料作物の栽培面積の拡大を強化し、大豆と油料作物の生産能力向上プロジェクトを踏み込んで推進し、大豆とトウモロコシの帯状複合栽培を着実に推進し、東北地域と黄淮海地域での穀物と豆の輪作を支援し、アルカリ性土壌を利用した大豆の栽培の開発を着実に進める。現代的設備を用いた農業を発展させ、設備利用農業の現代化レベル向上の行動を実施する。多様化した食物供給システムを構築し、大きな視点に基づいた食物観を樹立する。食糧・重要農産物の調整・コントロールを全体的かつ着実に実施し、食糧の緊急時の対応保障能力構築を強化する」などが提起された。(人民網日本語版論説員)

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「人民網日本語版」2023年2月17日

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