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【対談】ガチな中国での生き方を語ろう

ライター 斎藤淳子さん × 人民網編集者 玄番登史江

人民網日本語版 2023年07月10日16:44

結婚と恋愛を切り口に中国の社会や各世代を分析・紹介している「シン・中国人」の著者である斎藤淳子さんは、筆者にとってほぼ同じ時期にこの国で学び、働き、家庭を築き、子育てをして、共に四半世紀ほどをこの国で過ごしてきた「同志」のような存在。そのため「シン・中国人」を読みながら、思わず、「そうなの!そうなんだよね!」と本に向かってうんうんと大きくうなずいてしまった。そしてふと思った。この怒涛の変化に揉まれ、そんな変化に麻痺しそうになりながら、1冊の本にまとめようと思った斎藤さんのパワーの源はどこにあるのか?今回は対談という形でそんな斎藤さんと「ガチな中国」での生き方を語ってみた。人民網が伝えた。

ライターの斎藤淳子さん(撮影・張麗婭)。

ライターの斎藤淳子さん(撮影・張麗婭)。

――恋愛と結婚を切り口にした訳は?

玄番 まず最初にどうして恋愛と結婚を(著書の)切り口にしようと考えたのですか?読み始めた時に、これをとり上げるんだ!と印象的だったので。

斎藤 そう思った時の最初のイメージってなんでしたか?

玄番 「中国の人って恋愛が苦手そうなのに」でした。

斎藤 あはははは!

玄番 中国の人ってコミュニケーション能力はあるほうだし、ガンガン前向きですけど、著書でも紹介されていたように、制度や戸籍の関係から、単純に「I love you」という思いだけでは、恋愛できないというのが、私が中国に来てすごく感じたことでした。私の知る中国人の多くが、結婚相手が住居となる不動産を保有していないとだめだとか、北京市の戸籍でなければだめだとか、しがらみが多すぎて、恋愛を楽しめていない気がしていました。だから今回の恋愛と結婚をテーマにしたことに驚きを感じたんです。単純なラブストーリーにはならないテーマをどういう風に加工するのかな、というのがすごく興味深かったです。

斎藤 それは玄番さんがこのテーマについてすごく詳しいからそう感じたのだと思います。逆にまさにそれが狙いでした。中国のことを、その日常を、わかってもらいたかったからです。個人の顔が見えるような、隣で中国の陳さんや王さんとしゃべっているような感じになってもらえるような本を書きたかったからです。それは例えば中国のグルメや教育でもよかったのかもしれません。実際、私もこれまでそうした記事をたくさん書いてきたので。ただその中でも何か自分がドキドキできるものを書きたいなと思った時に、あ!これだ!と。恋愛には世界共通のドキドキ感があるし、私自身がもっと頑張れ!と言いたいような深い所にまで触れることができると。私がやりたかったのは、まさに玄番さんが今おっしゃったような、恋愛や結婚という切り口から見える様々なものがある中国の社会を、読者に見てもらうことでした。

北京日本人倶楽部主催の「シン・中国人」出版記念講演会で講演する斎藤さん(撮影・玄番登史江)。

北京日本倶楽部主催の「シン・中国人」出版記念講演会で講演する斎藤さん(撮影・玄番登史江)。

――とにかく広い中国をどうやって1冊の本にまとめる?

玄番 私自身も「イマドキ中国」というコーナーで、日本人も共感を覚えやすいテーマで中国を紹介していますが、その際一番難しいのが、中国はとにかく広くて、地域差や世代間の差がものすごい点。だからこそそんな中国を1冊の本にまとめたのがすごいと思いました。本を書くにあたり、一番苦心されたことは何ですか?

斎藤 それは中国を語る時に常にある問題で、本当にピンキリなので、どこを切っても同じ柄が出てくる金太郎飴のようにはいかないです。だから中国を紹介する本を読む際は、まず著者はどこに立ち、何を見ているのかという点をチェックすべきだと思っています。私の場合は、インタビューをした人は限りがあるので、なるべく北京の人に限らず様々な地域からやって来た人を集めるようにしました。その一方で、中国の世相や流行っているものにも注目し、それらを取り上げる際にも、それを周りにいる人に聞いて、そのことについてどれだけの人が本当に注目して興味を持っているか、反応するかをすごく気を付けています。欲を言うならもっと中国全土を行脚して、色々と話を聞いてくれば良いのですけれどね。

玄番 中国全土を行脚した場合、それを取りまとめるのがとても大変な作業になりそうですね。

斎藤 だから「小紅書」や「抖音」などを通じて、若い人が見ているものをチェックするといった方法も利用するしかないかなと思っています。人気があったり、話題になったりしているのは、それなりの数の人の感性に響いているからで、取り上げるに値する話題だと思っています。それらを通じて、あまり大きくずれないように、(著書の)バランスをとれたと思っています。

北京日本人倶楽部主催の「シン・中国人」出版記念講演会に集まった人々(撮影・玄番登史江)。

北京日本倶楽部主催の「シン・中国人」出版記念講演会に集まった人々(撮影・玄番登史江)。

――どうやって常に新鮮な目で中国を捉え続ける?

玄番 それから斎藤さんに質問したかったのが、どうやって常に新鮮な目で中国を捉え続けるか?という点。

斎藤 これはやっぱり玄番さんじゃないとわからない視点だと思いました。おっしゃる通り、これは一つの課題です。どうしても麻痺してきてしまうので、日本から初めて来た人の感覚をすごく大事にしています。そういう方に私の記事を読んでもらって感想を聞いたり、(中国を)全く知らない人が読んだらどう感じるかという点をすごく意識しています。あとは自分の中で何か引っかかった際には、その時は何の理由なのかは分からなかったとしても、メモしておくこと。その時すぐに理論的な理由が分からなかったとしても、あの時にひっかかったのは何だったんだろうなと考えられるようにメモをしておくようにしています。

玄番 なるほど。こういう疑問を抱いたのは、多分私自身も同じことをやろうとしているからだと思います。完全に日本人のみの感覚でもなく、完全にローカライズされた感覚でもなく、という立ち位置がとても大事だと思っているので、駐在などで日本から中国に来たばかりというような方々とお話する機会を大事にしています。

斎藤 それは大事だと思います。彼らが何を感じて、何にビックリするのか、という点はすごく重要ですし、そういう感度をあげておくのはすごく大切だと思います。それと起きていることには何か理由があると常に思うこと。中国ってこうだよね、で終わりではなく、その起きていることに対して、皆はなぜそれを支持しているのか?そういうことになっているのかという点についても常に考えるようにはしています。

ライターの斎藤淳子さん(写真左)と筆者(撮影・張麗婭)。

ライターの斎藤淳子さん(写真左)と筆者(撮影・張麗婭)。

――愛は人生のフックになる!

斎藤 著書のレビューの中に、官庁の資料を見ているみたいでつまらなかったけれど、読み終えたら中国の人が愛おしくなりましたというのがあって、これこそ私の欲しかった感想だと思いました。つまらない本だと思って読んでいたら、中国の人が身近に感じた。なんだ、私たちとそんなに変わらないんだと思ってもらえたなら、とてもありがたいです。

玄番 中国が全て良いとは言わないけれど。

斎藤 そう。全然そんなことを言うつもりはないです。

玄番 でもお互い様ですよね。あなたにも問題があるし、私にも問題がある。でも悪い所ばかり見ていたら、お付き合いはできません。

斎藤 自分にとっても何もいいことが無いですよね。

玄番 全くです。良い所を見て、クローズアップすることで、それこそ小さな問題が「まぁ、いいか」という風になれば良いなと思っています。

斎藤 だから悪い所ばかり見るような悪循環を打ち破るのは愛しかないと思っています。愛は必ずしも異性へのロマンスでなくてもいい。例えば可愛い子猫を見て好きだなとか、私が好きなこのコーヒーは素晴らしいとか、なんでもいいと思うんです。そういう感性をもっと研ぎ澄まして、楽しんで生きていけば、逆にそれを通して、国とかを越えられて、お互いを尊重し合うことができると思う。だから愛はフックになると思うんです。何かを好きなることが重要。中国にいる以上、中国の何かを好きになれば、入っていけると思います。

玄番 それで違う中国が目の前に広がっていく、と。

斎藤 ええ、全然別のものが見えてくると思います。

玄番 それは本当にこの国だからというのではなくて、全てに言えると思うし、日本で日本語を勉強している中国人にしても、中国で中国語を勉強したり、仕事で来た日本人にしても、自分の目で何かしら興味のドキドキを探すことができたら、全然違うと思います。また自分からそういう風にしていかないと、なかなか異国の地でずっとは暮らせない。

斎藤 本当にそうだと思います。

最後に

斎藤さんの「愛のフック」探しは今も継続中で、最近はスイングダンスを習い始めたという。音楽を身体で感じて、パートナーと組んで踊る際の人間のぬくもりが心地良いとキラキラした目で語ってくれた斎藤さん。対談で私自身も彼女のパワーを浴びて、まるで日光浴をしたような気分を味わわせてもらった。(文・玄番登史江)

「人民網日本語版」2023年7月10日 

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