無印良品アートディレクター原研哉氏「未来の風景に伝統を見たい」 (2)
原氏は、大柵欄の特徴は建築物の高さが高くても二、三階しかなく、すべて低層建築で高い建物がないのが特徴だと気付いた。「特に3Dでの表現に合っていると思いました。俯瞰すれば、四合院の全体的な様子を見ることができますから」と語る。
また、「自分は伝統的なものを大切に考えている人間で、すべての伝統的な味わいにとても関心がある。伝統は一つの模様ではなく、人の心の中に沈殿してきたものであると考えている。伝統を尊重するということについて、機械的に伝統的な文様にモダンなデザインをむりやり加えるのではなく、心の中にある文化の深いところの感覚を探ることだ」と続ける。
原研哉氏の著作の一つに「白」という本がある。この本の中で、白は一つの色彩を指しているのはなく「最も自分の心の中の禅に近い表現」であると彼は認識している。彼がデザインするものはそのほとんどがシンプルさで有名だ。彼は「自分は掃除夫のようなもので、余分なデザインをそぎ落とすのだ」という。原氏はまた、伝統は現代最先端の科学技術によって変えられるものではなく、伝統とは精神性であり、人間固有のもので、心の深いところに永遠に存在するものだと認識している。「文化は古いものを打破しなければ新しいものを打ち建てることができない。私たちは常に捨てることで、常に新しいものを生み出せる。捨てる過程で残っていくものが本当の伝統なのだ。私は未来の様子の中に伝統を見る」と彼は言う。
有名な日本の日用品ブランドである「無印良品」が主催する国際デザインコンペティション「MUJI AWARD」が、2013年中国で開催されることになった。コンペ期間中は、この伝統と未来が交錯する国で、世界を驚かすような作品が出てくるだろうと期待されている。「ここでは本来ないものを勝手に作って現在まったく存在しないものを生み出すのではなく、一脚のいす、一つの茶碗などの日用生活品から出発して、それが未来にある新しい様子を想像し、未来に通用する普遍的なデザインを創作することだ」。原氏によると、最終的に選考に残った受賞作品は、無印良品で製品化され市場に出ることもあるという。