毎年、中国各地の商品210万種類以上が、浙江省義鳥市に集まり、そこから200以上の国・地域へと輸出されている。そこでやり取りされているのは一見何の変哲もない生活雑貨だが、ゼロからスタートし、小さなつぼみを大きな花に育てたレジェンドが隠されている。
義鳥市双童日用品有限公司の楼仲平・董事長(会長)は14歳の時から、街に出て歯ブラシを売ったり、露店を出したり、かじ屋をしたり、養殖をしたり、アパレル関係の仕事に就いたりと、20業界以上を経験してきた。そして、1994年にある偶然の機会に、「ストロー」メーカーを立ち上げ、企業家としての道を歩み始めた。
1982年に撮影された義鳥の生活雑貨市場(湖清門)(画像提供・義鳥市党委員会宣伝部)。
ストロー1本を作って得られる利益はわずか0.0008元(1元は約15.5円、約0.01円)。普通の人から見れば、あまりに小さくて儲けがほとんどなく、取るに足らない小さな商品を、かつて商売人だった楼さんはビッグビジネスにしてしまった。
楼さんの会社はイノベーションと高度化を続けてくことで、業界の中でも一歩先を進むようになった。例えば、風車ストロー、メガネストロー、ミュージックストローなど、バラエティーに富んだデザインや機能のストローを次々に打ち出してきた。なかでもハートストローは、そこに発明特許4件が隠されている。2人同時に使うことができ、飲んでいるものが逆流して風邪などがうつってしまうことも防げるこのストローはネット上で大人気のヒット商品で、1本当たりの価格はなんと10数元に上る。
「ストロー」は、「メイド・イン・義鳥」のモデル転換・高度化の典型例で、「メイド・イン・チャイナ」の現在の縮図でもある。
義鳥の生活雑貨市場でやり取りされている200万種類以上の商品のうち、異国情緒あるマトリョーシカ人形は外国の業者に大人気だ。そのほとんどは黒竜江省哈爾浜(ハルピン)尚志市の「一面坡」という小さな村で製造されている。
一面坡は木々が茂る山に囲まれた村だ。そして、そこにあるのが、ロシアの民芸品であるマトリョーシカ人形の原材料であるカバノキとシナノキだ。30数年前、木工作業が得意な同村の職人たちは、普段燃やしている木を使ってマトリョーシカ人形を作ることができ、コストも安いということを知った。それで、手の器用な職人たちはマトリョーシカ人形の製作を始め、少しずつその規模も大きくなっていったという。
現在、同村で年間1000万セット以上のマトリョーシカ人形が製作、販売され、年間売上高は2億元に迫る。中国全土のマトリョーシカ人形の売上高の約90%を占めているほどだ。「メイド・イン・一面坡」のマトリョーシカ人形は、義鳥や哈爾浜などだけでなく、ロシアなど多くの国にも輸出されている。
マトリョーシカ人形を製作する一面坡の職人(撮影・任淑芹)。
現在、一面坡の約2万世帯のうち、マトリョーシカ人形産業に従事しているのは1000世帯以上に達している。一見、簡単な作りに見えるマトリョーシカ人形だが、実際には10以上の工程を経て製作される。その工程も同村では明確に分業化されている。絵付けをする女性の一般的な月收は3000元以上。木工職人なら最多で1万元以上になる。同村の住民は出稼ぎに出る必要はなく、女性らは自宅で十分な収入を得ることができるようになっている。
中国には、その他、「鉛筆村」や「水着市」、「靴下シティ」、「ギター町」などがある。
同じく哈爾浜の尚志市元宝村には、文具メーカー・晨光の鉛筆生産ライン3本があり、そこでは年間で鉛筆18億本、鉛筆板3000万枚を生産し、それぞれ中国全土の生産量の20%と60%を占めている。
また世界で販売されている水着4着につき1着は遼寧省葫芦島市で製造されている。同市には水着メーカーが1200社以上あり、年間2億2000万着(セット)の水着が生産されている。
浙江省の小さな都市・諸曁市では、中国で生産される靴下の70%、金属製パイプの70%、真珠の80%が生産されている。
広東省恵州市恵陽区秋長街道には、ギターメーカーと関連企業200社以上、独自ブランド120以上が集まり、ギター生産量は中国全土の約60%、世界の25%を占めている。また、ウクレレの売上高はなんと世界の80%を占めている。
分業化が進むようになり、義鳥には、国家級の産業拠点13ヶ所、国家級の経済技術開発区1ヶ所、省級産業クラスターエリア1ヶ所、省級工業パーク1ヶ所が設置されてきた。そして、工業企業2万6700社以上が同市場で発展し、産業クラスターのアウトラインが形成されつつあり、靴下、アクセサリー、工芸品、玩具、ファスナー、紡績など、高い競争力を誇る16業界が誕生し、「生活雑貨、大産業」、「小企業、大クラスター」、「小規模、大波及」の発展態勢が形成されている。
「義鳥では、『石』でも、輝く可能性がある」と話すマレーシア籍の業者・郭集福さんも義鳥で起業に成功したというのが良い例だ。
中国で質の高い生活雑貨が生産できるのは、現地の市場環境や資源の面での優位性、さらに政府の正確な誘導とサポートと密接な関係があり、対外的に地域ブランドを構築し、対内的には市場の管理を規範化し、質の高いサービスを提供している。
国のサポートの下、さらに多くの「メイド・イン・チャイナ」の商品が義鳥から世界へと販売されている。
2014年11月18日、義鳥からスペイン・マドリードへと向かう「中欧班列」(撮影・王建明)。
2014年11月8日、中国と欧州を結ぶ国際定期貨物列車「中欧班列」がコンテナ82基を載せて義鳥から出発した。それにより「中欧班列」が開通した。現時点で、同路線合わせて約900本が中国と欧州を往復した。中国の8省・市の商品2000種類近くが、ユーラシア大陸の37ヶ国・地域へと輸送されてきた。2018年、義鳥のEC取引額も2368億元に達した。うち、越境ECの売上高は浙江省全体の約半分を占めている。
今年10月9日、長江デルタ初の欧州と結ぶ越境EC対応「中欧班列」・eWTP(世界電子貿易プラットフォーム)菜鳥号が開通し、義鳥から欧州まで直行する海外へと販売される荷物を載せた列車が出発した。
「ゼロからのスタート」や「何でもあり」が多くの人の義鳥に対する評価で、それは中国の生活雑貨市場発展に対する評価でもある。
習近平総書記の「『メイド・イン・チャイナ』の『クリエイト・イン・チャイナ』への変化、『中国スピード』の『中国クオリティ』への変化、『中国製品』の『中国ブランド』への変化を推進する」という言葉にあるように、「メイド・イン・チャイナ」の生活雑貨は今、「一帯一路」(the Belt and Road)イニシアティブを通して、世界へ進出する足並みを速めている。(編集KN)
「人民網日本語版」2019年11月16日