中度の高齢化とは何か。民政部(省)が発表した最新の予測データによると、第14次五カ年計画(2021-2025年)の終わり頃、中国は「中度の高齢化」社会に入り、60歳以上の高齢者人口の規模が3億人に達するという。国際連合の分類では、1つの国で60歳以上の人口の比率が10%を超えるか、65歳以上の人口の比率が7%を超えると、その国は「高齢化」社会に入ったとみなされる。この2つの指標が倍になる(60歳以上の人口の比率が20%を超えるか、65歳以上の人口の比率が14%を超える)と、その国は「高齢」社会に入った、言い換えれば「中度の高齢化」社会に入ったとみなされる。この基準と人口予測の結果に基づくと、中国は2000年に「軽度の高齢化」社会となり、2025年には「中度の高齢化」社会に突入する見込みだ。「光明日報」が伝えた。
人口の増加にははっきりと慣性が働いており、現在の高齢化プロセスにはこれまでの歴史における人口出生の変動状況が反映されている。新中国が成立してから1970年までの間に、中国ははっきりとした出生数のピークを2回経験した。1回目は50年から58年まで、2回目は62年から68年までで、特に2回目のピーク時に出生率は40‰に達し、7年間で1億9千万人が生まれた。ピーク時に生まれた人々が第14次五カ年計画期間に徐々に高齢期に突入し、高齢化プロセスの加速に拍車をかける。予測では、同期間には60歳以上の高齢者人口が毎年平均約1千万人増加し、第13次五カ年計画(2016-2020年)期間の700万人を大幅に上回るという。高齢化プロセスの加速が労働力の構造を急速に変化させ、医療保険や年金などの公的支出の急増をもたらし、社会経済体制の速やかな調整にとって試練になるという。
「中度の高齢化」で真っ先に試されるのは医療、年金などの財政支出と社会保障システムだ。2016年、中国の社会保険基金は支出超過になり、黒竜江省は全国で初めて年金の残高がゼロになった省となり、遼寧省、河北省、吉林省、内蒙古(内モンゴル)自治区、湖北省、青海省も同年の年金の残高がマイナスになった。年金保険の全国統一化が実現し、他の保険の統一レベルが向上するのにともなって、地域における年金財政の逼迫は緩和された。国民皆保険計画の実施と公的な財政補助金の増加も、年度ごとの社会保険基金の支出超過問題をひとまず解決した。しかし政策による一時的な調整効果がなくなっていくと、経済の下ぶれリスクが増大し、第14次五カ年計画期間には再び支出増加率が収入増加率を上回る局面に陥り、基本年金保険基金の長期積み立てにとって試練になるとみられる。
「中度の高齢化」によって次に試されるのは社会の福祉システムであり、医療衛生サービス、介護産業、コミュニティケアなどを早急に整備し充実させる必要がある。介護サービスを例にすると、一人っ子世代の両親が高齢期になると、社会の介護サービスニーズがますます大きくなるが、中国の介護サービスシステムには供給不足と資源の浪費という構造的な矛盾がある。地域密着型介護の発展は非常に遅れており、在宅介護を効果的に支えられていない。介護施設は機能が整理されておらず、質もバラバラだ。企業として利益が上がらず、存続できない介護施設がある一方で、価格が高すぎて一般の人は利用できず、介護施設としての役割を果たせていないところもある。中国の現在の医療衛生サービスシステムも「中度の高齢化」社会のニーズに応えることができない。高齢者層は医療ニーズが高く、病気の経過が長く、さまざまな慢性疾患があり、セルフケア能力が低い。現在の中国は医療資源の分布がアンバランスで、質の高い資源が過度に集中するという状況で、このことが高齢者の医療機関利用の利便性、アクセス性、包摂性の改善にとってマイナスになっている。
経済協力開発機構(OECD)加盟国のデータや経験からわかるのは、経済成長と高齢化は逆U字の関係になることだ。高齢者扶養率が17.5%以上になると、人口構造の変動が経済成長に与える影響がプラスの影響からマイナスの影響に転換する。国家統計局が発表したデータをみると、中国の19年の高齢者扶養率は17.8%だった。そのため高齢化が中国の社会経済にもたらすマイナス影響に備えて先に手を打っておかなければならない。まず、経済発展モデルの転換を加速し、供給側の構造改革を堅持し、人的資本を絶えず積み上げて蓄積し、科学技術革命が高齢化社会のために作り出す発展チャンスを積極的に迎え入れ、高齢化プロセスにおける労働力供給の減少による制約を打ち破り、知識型・イノベーション型経済が産業競争力の向上を牽引するよう推進しなければならない。次に、社会の体制・メカニズムの改革を深化させ、高齢化ニーズという角度から社会福祉の水準を引き上げ、社会保障制度の改革を持続的に推進し、家庭とコミュニティと施設・機関による多様な介護サービス・介護商品の供給システムを整える必要がある。さらに、制度、文化、科学技術、法制度などさまざまな角度から高齢者にやさしい社会の構築を推進し、高齢者を敬愛する良好な社会環境作りをしなければならない。
高齢化への対応とは決して「どうやって介護するか」といった単純な問題ではない。高齢化は国民経済の運営、社会体制の建設、社会文化の継承、さらには国家や民族の興亡に甚大な影響を与えるものであり、中国はよりマクロな視点、より長期的なビジョン、より固い決意をもって高齢化の挑戦に立ち向かわなければならない。(編集KS)
「人民網日本語版」2020年10月30日