上海市の永康路に最近、一風変わったカフェが登場した。この店では、壁に開けられた小さな「洞穴」から、店員が出来上がったコーヒーを「クマの手」で渡してくれる。客はコーヒーを待っている間に、この「クマの手」と交流することもできる。
このネット全体をほっこりさせた可愛い「クマの手」の背景には、実は心温まるストーリーが隠されている。
このカフェは非接触の販売スタイルを採用している。QRコードが表示されたドリンクメニューが壁に掲げられ、どのコーヒーの価格も20元(1元は約15.9円)。客はQRコードをスキャンしてセルフ方式で注文することができる。
出来上がったコーヒーは、壁の穴から毛むくじゃらの「クマの手」が手渡してくれる。この可愛らしい「クマの手」はピースサインをしたり、バラの花をさし出したり、握手したり、頭をなでてくれたりと、可愛らしさ満点だ。
実のところ、このカフェは公益プロジェクト。店長は聴覚障害者のバリスタで、コーヒードリップのコンテストで入賞したこともある。そしてクマの手でコーヒーを渡してくれるのは、顔にやけどのある店員だ。2人は上海市障害者連盟の技能訓練コースの受講者で、こうした特別な方法で、顧客に心温まるサービスを届けている。
カフェの中には、順番待ちの番号を呼び、順番が来たことを知らせるスタッフもいる。また、オーダーが決められない「選択恐怖症」の人がいれば、スタッフが出てきて商品の説明や推薦もしてくれる。
障害者証を持っている人が来店した場合は、特製ブレンドコーヒーを無料でサービスしてくれる。新型コロナウイルス感染対策期間中、このカフェでは利用客に安心してもらおうと、毎日定期的に「クマの手」を消毒している。
カフェの人気に最初に火が付いたのはこの毛むくじゃらの「クマの手」が理由だった。やがて、この壁の穴の奥にあるストーリーと、このカフェが身体障害者雇用のためにオープンしたことが知られていくと、この店を訪れる人はますます多くなり、まだ正式オープン前だというのに、口コミ評価サイトのカフェランキングで1位になった。ネットユーザーは親しみを込めて、この店を「クマの手カフェ」と呼んでいる。
△ある口コミ評価サイトのキャプチャー画面
冬の寒さが次第に厳しくなる中で、この街角の小さなカフェは多くのネットユーザーに温もりを届けている。ネットには、こんな声が寄せられている。
「顔を合わせることがなくても、一杯のコーヒーだけで心が温かくなる。」
「週末に行ったばかり。1時間以上並んだ。もともとはクマの手が目当てで行ったけれど、飲んでみて、行くだけの価値があると思った。このカフェのメニューを全制覇したい。」
12月3日は国際障害者デーだった。「クマの手カフェ」もこの日に正式オープンした。中国には現在約8500万人の障害者がいる。目が不自由な人もいれば、耳が不自由な人もいる。健常者なら簡単にできることが、障害者にとっては非常に難しいことになる。思いやりをもって彼らをサポートし、そして彼らをもっと理解し、尊重することが求められている。(編集AK)
「人民網日本語版」2020年12月4日