原発処理水の海洋放出 日本経済にどれほどの影響を与えるか?

人民網日本語版 2021年04月15日10:55

日本政府は13日、2年後に東京電力福島第一原子力発電所で貯蔵されている大量の放射能汚染水を希釈した後に段階的に海洋に放出することを決定した。この決定は日本各界の強い反対を引き起こし、特に東日本大震災の被災地の人々の間で強い反対が起こった。被災地の人々は、この決定は復興が進まない被災地の経済にとって、弱り目にたたり目だとみている。「経済参考報」が伝えた。

2011年3月11日、日本の福島県沖でマグニチュード9.0の極めて強い地震が発生した。付近の沿海地域で多くの命や財産が失われただけでなく、地震による巨大な津波が福島第一原発を襲い、原子炉1-3号機は炉心溶融(メルトダウン)し、旧ソ連のチェルノブイリ原発事故以降で最も深刻な原発事故となった。

この10年間、放射能汚染は逃れることの出来ない悪霊のようにまとわりつき、被災地の経済再建プロセスにおける大きな障害となっていた。日本で話題になった「風評被害」とは、信用や利益が世間の噂話によって損なわれることを意味する。

当初、人々は被災地で生産された野菜や果物、シーフードなどの農産物、水産物、さらには工業製品が放射能に汚染されているかもしれないとして敬遠された。被災地の人々がさまざまな努力を重ねた結果、現在では圧倒的多数の製品の放射線の指標が正常範囲に戻ったが、それでも被災地の製品に懐疑的だったり不信感を拭えなかったりする人が多い。

今年初め、農林水産省水産庁は地震後の再建問題について福島と周辺の岩手、宮城、茨城、青森、千葉の6県の水産加工品メーカー1007社に対し8回目のアンケート調査を行なった。それによると、売上高が地震前の80%以上まで回復したところは49%にとどまり、生産能力が地震前の80%以上まで回復したところは67%だった。売上高でも生産能力でも、福島の回復状況が引き続き最も遅れている。

生産能力に比べ、売上高の回復はよりスローペースになる。これは主に被災地の水産品の競争力が低下したこと、価格引き下げを迫られていることが原因だ。関連企業によると、「販路の喪失または縮小、原材料不足、人手不足は売上高の回復を制約する最も主要な原因だ」という。

福島県相馬市にある相馬原釜魚市場買受人協同組合の佐藤喜成組合長は、「福島原発事故の影響により、福島県の魚の価格は低迷状態が続いている。地震から10年経ったが、卸売市場の年間売上高はかつての半分にも及ばない。これで汚染処理水が海洋放出されれば、新たな『風評被害』が起きることは確実だ」と述べた。

茨城県北茨城市の海鮮料理店の店主(71)は、「福島原発事故が発生してから、高級魚の価格が暴落した。汚染処理水が海洋排出されて『風評被害』が起これば、漁業従事者(漁民)の利益が損なわれるだけでなく、コールドチェーンや水産加工など関連産業がそろって打撃を受けることになる」と述べた。

原発事故が起きてから、福島県周辺海域での漁業は一度操業停止になり、その後長らく漁獲制限政策が実施され、操業時間、漁獲する魚種と数量が制限される試験操業の状態に置かれていた。今年4月1日に関係方面が政策による制限を解除し、漁業者は全面的に操業出来るようになったが、その後、政府が汚染処理水を海洋放出する予定との情報が伝わり、被災地の漁業者は泣くに泣けない状態だ。

先に政府が汚染処理水の海洋放出に関して開催した公聴会で、代表の一人が、「汚染処理水を海洋放出すれば、福島県と周辺の地域が影響を被り、漁業者の操業、水産品の価格に影響が出るだけでなく、周辺の観光産業も打撃を受ける可能性があり、政府は具体的な補償措置を打ち出さなければならない」と指摘した。(編集KS)

「人民網日本語版」2021年4月15日

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