日本政府は13日の閣議で、福島第一原発の放射性物質を含む汚染水を濾過・希釈した後、海に放出することを正式に決定した。
報道によると、東京電力は約1000基のタンクを準備しており、現在すでにその9割が満杯になっている。すべての貯水施設の総容量は約137万トンで、2022年秋に上限に達する見通しだ。
国際環境NGOのグリーンピースは、これを強く非難している。グリーンピース・ジャパンの気候変動/エネルギー担当の鈴木かずえ氏は12日、取材に対し「日本政府が福島第一原発に保管されている123万トン以上の汚染処理水を太平洋に放出することを正式に閣議決定すれば、これは生態環境を無視する決定だ。福島の住民を再び失望させるだけでなく、周辺及び環太平洋地域で暮らす住民を被曝の脅威に晒してしまう。日本には福島第一原発の所在地及び周辺の無人地帯で長期保管タンクをさらに建設し、放射能汚染の拡散のリスクを最小限に抑える技術と条件を持っている。だが内閣は太平洋に汚染処理水を放出するという、最もローコストな手段を選択した」と述べた。
生態環境部(省)原子力・放射安全センター首席専門家の劉新華氏はこのほどの取材で、福島原発事故処理水の量が多く、トリチウムの濃度が高いといった要素を考慮したうえで、「日本政府はタンクの増設などさらなる処理措置を検討し、軽率な放出を回避し、処理済み汚染水の放出準備に向け十分な時間を確保するべきだ」と述べた。
■世界には処理水の海洋放出の先例はなし
福島原発事故は2011年に発生し、原子炉が稼働停止してからすでに10年になる。劉氏は「福島原発の放射性物質を含む汚染水には主に、原子炉そのものの冷却材、事故後に炉心の冷却を維持するため注入された水、原子炉に浸透した大量の地下水や雨水という3つの出処がある」と述べた。
劉氏は「福島原発事故後、東京電力は汚染水の大半の放射性物質を除去するALPSと、処理・浄化後の汚染水を保管する大量のタンクを設置した。こうした処理水にはトリチウム、ストロンチウム、セシウム、ヨウ素などの放射性物質が含まれている」と述べた。
劉氏は「チェルノブイリやスリーマイル島など歴史上発生した原発事故はいずれも大気への放出で、福島原発事故のような大量の汚染水が出る原発事故は発生していなかった。そのため原発事故処理水の海洋放出には先例がない」と指摘した。
■海洋放出の方法にはさらなる検討が必要
劉氏は「原発事故処理水の処置には先例がなく、処置の方法についてはさらなる検討が必要だ。汚染水放出の海洋環境への影響の程度は、放出される放射性物質の種類、濃度、総量、及び特定の放射性物質と沈積物や海洋生物などの海洋環境重要要素との相互作用などによって決まる。しかし福島の大量の汚染処理水が太平洋に放出された後、放射性物質が放出エリア付近の海域の海洋沈積物及び海洋生物に密集し、一部の放射性物質が海流と共にその他の海域に移り、拡散することになる。日本は中国の近隣だ。日本が汚染処理水を近海または遠洋の公海のどちらに放出するとしても、放射性物質は海流に乗り北太平洋の海域に拡散する。中国の管轄海域は、放射性物質の境界を跨ぐ汚染の影響を避けられない」と述べた。
劉氏は「日本政府は除染係数の高い汚染水処理技術と装置を採用し、基準値を上回る放射性物質をさらに浄化処理し、処理水に含まれる放射性物質の量を極力減らすべきだ。トリチウムの処理技術を研究するとともに、研究の進捗と成果を速やかに公表し、実行可能な技術があれば直ちに汚染水のトリチウムの処理に用いるべきだ」と提案した。
グリーンピースは、放射性物質を含む汚染水の持続的な増加を回避するため、燃料デブリ冷却を現行の水冷から空冷に変更するよう提案している。地下水の持続的な浸透については、福島原発の敷地に堀を作り隔離すべきとしている。(編集YF)
「人民網日本語版」2021年4月13日