プライバシー保護コンピューティングは、コンピューティングを目的にプライバシー規約を設計するのがその本質だ。端的に言えば、データを使うことはできても、見えないようにするという状態を実現する。北京瑞莱智慧科技有限公司の田天最高経営責任者(CEO)によると、プライバシー保護コンピューティングには、「データの使用を可能にする一方、データを見ることができないようにする。前者はコンピューティングロジックだけでなく、さらに複雑なコンティニュアムコンピューティング、データ価値の転化、抽出を実現する。後者については、データの流通、コンピューティングをプレーンテキストではなく、暗号文データで行うため、データのプライバシーとセキュリティを守ることができる」と説明する。
閆副部長は、「従来のデータの使い方と比べると、プライバシー保護コンピューティングの暗号化メカニズムは、データ保護を強化し、データ漏洩のリスクを低減できる。そのため、欧州連合(EU)を含む一部の国や地域では、『データの最小化』を実現する方法と見なされている。また、データの仮想化、匿名化処理といった従来のデータセキュリティ手法では、一部のデータディメンションを犠牲にしなければならず、データ情報を効果的に利用することができない。一方、プライバシー保護コンピューティングなら、解決するための別の思考パターンを提供し、セキュリティ保護を前提に、可能な限りデータ価値を最大化できる」と説明する。
プライバシー保護コンピューティングは現在、さまざまな業界で応用され始めている。例えば、金融や医療の分野ではたくさんのシーンで応用が進んでいる。楊室長によると、国家医療健康ビッグデータの第一陣の試行都市である福建省厦門(アモイ)市は、プライバシー保護コンピューティングを活用して健康医療ビッグデータ応用開放プラットホームを構築した。金融の分野では、プライバシー保護コンピューティング技術を駆使して構築したリスクコントロールモデルがあり、業界の垣根を超えたデータリンクを実現し、詐欺被害防止能力を向上させ、インターネット金融や消費金融の面で幅広く応用されている。
政務の面では、プライバシー保護コンピューティング技術は、政務データ開放のために効果的な解決策を提供している。多くの地域が現在、プライバシー保護コンピューティングをデジタル化発展計画に盛り込み、データ経済促進の突破口としている。例えば、データ流通・共有の取引所、デジタル政府、デジタル社会建設などに応用されている。広東省が今年7月発表した「広東省データ要素市場化配置改革行動ガイドライン」は、プライバシー保護コンピューティングを含む新型データインフラ整備を盛り込んでいる。四川省成都市は中国全土に率先して、スーパーコンピューターに基づくプライバシー保護コンピューティングプラットホームを構築する計画だ。
応用の拡大にはセキュリティと性能の両立が必須
データ関連の法律法規の整備されるにつれて、各業界では合法的なデータ流通のニーズが日に日に高まっている。プライバシー保護コンピューティング市場は新たな発展のチャンスを迎えているものの、全体的に見ると、依然として商業応用の初期段階にとどまっている。
プライバシー保護コンピューティング製品の安全性の検証については、規範化された基準や方法が依然として不足している。閆副部長は、「当院は現在、主流のプライバシー保護コンピューティング技術製品をカバーする系統的なセキュリティランク分け基準制定の可能性を積極的に模索し、業界の信頼とコンセンサス構築に取り組んでいる。アルゴリズムセキュリティ、暗号のセキュリティ、通信のセキュリティ、権限授与・認証といったカギとなる要素については、プライバシー保護コンピューティング製品の安全性を高めなければならない」と説明する。
安全であることを前提に、性能も製品の価値を図る重要な要素だ。中国国内のプライバシー保護コンピューティング製品は現在、特定のシーンで活用が可能になっており、今後、データ提供者やデータ量が増え、さらに複雑なシーンで活用されるようになれば、性能などの指標がさらに最適化と強化されることが必要になる。
プライバシー保護コンピューティングは、データ要素市場構築においてカギとなるインフラとなる可能性があるものの、本当の意味で核となる存在となるという重い責任を負うためには、依然として遠い道のりとなっている。閆副部長は、「プライバシー保護コンピューティングが今後発展していくためには、内部においてはコネクティビティを実現し、さまざまなプラットホーム間の相互認証、相互利用を実現し、プラットホームの障壁を打破しなければならない。また、外部に対しては、プライバシー保護コンピューティングと人工知能、ブロックチェーン、クラウドコンピューティングなどの技術の融合を進め、新世代情報技術全体の価値を発揮させなければならない」と指摘している。(編集KN)
「人民網日本語版」2021年9月14日