2022年に浙江省杭州市で開催される第19回アジア競技大会(杭州アジア大会)の組織委員会は、このほど開催された第4回中国国際輸入博覧会で、すべての競技種目を発表した。歴代の大会と比べて、エレクトロニック・スポーツ(eスポーツ)の8種目が初めて正式種目として加わり、この種目で獲得したメダルが国別メダル獲得数ランキングに計上されることになった。中国新聞網が伝えた。
eスポーツがアジア大会で採用されたことは、新興業界のeスポーツにとってどんな意味を持つのか。
eスポーツは単なるゲームではない
長年にわたりeスポーツの専門的教育に携わってきた鄧浩辰氏は、「eスポーツがアジア大会で採用されたことは心躍るニュースであることは間違いない。アジア大会での採用はeスポーツがニッチな存在からポピュラーな存在になったこと、ますます多くの人に認められるようになったことを意味する」と述べた。
寧夏回族自治区銀川市人民政府と銀川職業技術学院は2015年に共同でeスポーツ専攻を試験的に設置し、鄧氏が授業担当教員になった。当時、「eスポーツ」はまだ耳慣れない「珍しいもの」だった。今では、多くの大学が関連の専攻を開設し、「eスポーツは単なるゲームではない」との見方が多くの人に受け入れられている。
鄧氏は、「eスポーツの本質は競技スポーツであり、運動型スポーツとの違いは競技の設備が異なることだけだ。eスポーツも運動型スポーツと同じように、対戦者が同一の環境内で公平な対戦を展開する」と述べた。
1千億元規模の市場が「枠を超えて発展」
先ごろ行われたオンライン対戦ゲーム「リーグ・オブ・レジェンド」のワールドチャンピオンシップ(S11)決勝戦で、中国のeスポーツクラブEDGが優勝した。このニュースはSNSで幅広く話題になり、議論が繰り広げられ、eスポーツの影響力の強さの一端をうかがわせた。
eスポーツ市場の規模はどれほどか。艾瑞諮詢(iResearch)が発表した「2021年中国eスポーツ業界研究報告」によると、20年の中国eスポーツ市場の全体的規模は1450億元(1元は約17.9円)を超えており、21年は1800億元を突破する見込みという。
eスポーツ市場が発展し続けるのに伴い、ますます多くの社会層がeスポーツ業界に注目するようになり、eスポーツ業界自体もこれまでの枠を超えて発展し、数多くの新しい職業をも生み出した。中国の正式に発表された新職業には、「eスポーツ運営者」、「eスポーツプレイヤー」が突如登場した。
eスポーツ市場の規模はなぜこれほど急速に発展しているのか。寧夏大学イノベーション起業学院院長兼デジタル経済・スマート管理研究院責任者の馮蛟氏は、「eスポーツ業界には『電子ゲーム』、『競技スポーツ』、『新興業界』の3つの属性が備わり、若者層を引き続ける力が極めて強い」と分析した。
馮氏は、「他方で、関連政策の支援がeスポーツ業界が正式な職業の仲間入りをするための非常に有効な『アイデンティティコンテンツ』を提供し、資本のバックアップと技術によるエンパワーメントがeスポーツ業界の推進拡大・発信をサポートした」と続けた。
eスポーツはこれからどの方向へ向かうだろうか。
鄧氏は、「eスポーツにはさまざまな方向の可能性がある」とした上で、「これからのeスポーツ業界には2つのトレンドがあり、1つはトップ資源が集まった専門的eスポーツ産業に向かうことだ。もう1つは下へ向かい大衆の娯楽を媒体として、周辺の資源を誘導し開拓する方向へ向かうことだ」と述べた。
eスポーツの個人メディアを運営する呉海龍さんは、「eスポーツ産業の生態圏はこれからさらに豊富になって整備され、都市建設とも結びつくだろう。eスポーツタウン、eスポーツのテーマパーク、eスポーツ映画館などが、都市の文化・観光の発展を促進し、関連政策もeスポーツから発展したサービス項目をますます規範化するだろう」との見方を示した。
馮氏は、「これからのeスポーツ業界は一種の汎娯楽文化生態圏システムを構築するかもしれない。eスポーツ業界は発展過程で新興業界の属性を先天的に備えており、文化、観光、アニメ、映画・テレビ、スポーツ、その他の関連し派生した業界との『混在』や『交差』を実現できる。多元的な交差という視点は非常に大きな市場チャンスを生み出し、eスポーツ業界の未来の発展を支える上で極めて大きな力を持つことになる」と述べた。
注目されるのは、中国が世界のeスポーツ産業で最大の市場になるにつれ、中国eスポーツ業界の近年の発展では国際化がすでに顕著な特徴になったことだ。馮氏はこれに関して、「中国eスポーツ業界はeスポーツのゲーム開発や大会イベントの力を借りて、中国文化を移植することを奨励し、eスポーツ業界における『中国スタイル』を牽引していくべきだ」と提言した。(編集KS)
「人民網日本語版」2021年11月19日