うっすらと広がる雲の中に宮殿が聳え立ち、その反り返った軒先の上には、数羽のツルが飛翔している。その下には、髪を美しく結った女性たちが豪華な衣装を着て集まっており、太鼓や琴を演奏したり、箱や器を手に、振り向いておしゃべりしたりしている。こうした様々なシーンが光沢のある黒い漆塗りの板に描かれている漆塗りの屏風はとても品があり美しい。
漆塗りの屏風「明宮楽韵動長安」
その「明宮楽韵動長安」という名の漆塗りの屏風の長さは5.1メートル、高さは3.1メートル。板には硬い上等のイスノキを使い、天然の漆を全体に100回以上塗り、1年半かけて制作された。作品の制作者は国家級無形文化遺産プロジェクト「平遥推光漆器髹飾技術」の代表的な伝承人・薛生金さん(85)で、「『髹』とは、漆を塗ることを表し、『飾』は装飾を表す。材質と技の美しさを融合させたのが漆器だ」と話す。
「平遥推光漆器」は、唐の時代には広く知られるようになっており、すでに1000年の歴史を誇る。今でも1日5時間以上を作品の制作に費やしているという薛さんは、「漆器の制作は、非常に手間がかかり、どんな作品でも少なくとも3ヶ月はかかる。小さい作品ならアクセサリーケースや重箱、大きな作品ならタンスや屏風、さらに、装飾品として使用する梅瓶や壁画などがあり、全て漆塗りで作ることができる。漆器を作る工程は非常に複雑で手間がかかり、そのほとんどの作品は木で原型を作り、布着せ、地つけ、塗り、絵付けをし、磨き上げるといった工程が必要となり、貝殻を埋め込んだり、金箔を施したりして、繰り返し磨き上げなければならない作品もある」と説明する。