実際に自分の目で確かめるまでは、「近視の児童0人」の小学校があり、しかも児童536人全員の視力が1.0以上というのは信じがたい話だろう。新華社が報じた。
今月1日早朝、雲南省紅河哈尼(ハニ)族彝(イ)族自治州屏辺苗(ミャオ)族自治県湾塘郷にある湾塘小学校では、教師や児童が運動場の掃除をしていた。夜に大雨が降り、校内にはガジュマルの葉がたくさん落ち、山の木の上には靄がかかり、雲の間からはやわらかな心地良い太陽の光が差し込んでいた。
緑の木が茂る山に囲まれた湾塘小学校。撮影・岳冉冉
午前8時、始業式の国旗掲揚が始まり、ゆっくりと掲揚される国旗を児童536人が見つめていた。ドローンで撮影した画像を見ると、確かに眼鏡をかけている児童は一人もいない。
孫付標校長は、「当校はずっと眼鏡をかけないことを誇りとしてきたのに、私が眼鏡をかけているので、申し訳ない気持ちでいっぱいだ」と自嘲気味に語っていた。また、同じく眼鏡をかけている語文(国語)の毛合明先生も、「私たちのような『80後(1980年代生まれ)』や『90後(90年代生まれ)』の眼鏡をかけている教師は、近視のせいでたくさん苦労してきた。今思うと、子供の頃にテレビを見たり、ゲームをしたり、懐中電灯で小説を読んだりしていたのが悪かったのだと反省している」と語る。
5年1組の今学期1時間目の授業。撮影・胡超
湾塘小学校の授業の終わりを告げるチャイムは「魔法」のようで、チャイムが鳴ると同時に運動場が大賑わいになる。ゲームをする女児、バスケットをする男児で賑わい、卓球台の前にも長蛇の列ができている。そして、10分の休み時間が終わると、短い時間だというのにみんな汗だくで教室に戻って来る。
質素な設備しかないものの、体育の教師はあの手この手を使って児童が体育の授業が好きになれるよう取り組んでいる。日差しの強い午後2時半、体育の褚志華先生は、ガジュマルの木の下で、タオルを結んで作ったボール5個を使って、仰向けや座った状態、立った状態でそれを投げるよう児童を指導していた。授業中は笑い声が絶えず、「児童は毎日、3時間以上外で運動している」と褚先生は言う。
午後4時になると、湾塘郷衛生院(診療所)の医師や看護師が学校にやって来て、子供の視力検査を行っていた。
検査は1時間ちょっとで終わり、6学年から選ばれた児童25人全員の視力が1.0以上だった。うち、3人は、視力表の一番下の列にある記号の欠けた方向まで楽々と正しく答え、視力2.0と判定されていた。ただ、衛生院の楊玉強副院長は全く驚くことはなく、「同郷全域の児童の視力を検査して5年になるが、湾塘小学校では近視の児童がずっと0人。児童のうち20%は視力が2.0だ」と説明する。
児童が電子機器で遊ぶのではなく、できるだけ外で運動するよう、親らが見守っていることも児童の視力が高い原因の一つだろう。保護者の胡吉瓊さんは、「この夏休み、娘には1日30分しかテレビを見せず、時間を計っていた。他の時間、娘はいつも友達と外で遊んでいた」と話す。
山の中腹にある湾塘小学校は全寮制で、校門と男児の寮は山の麓にある。男児は毎日、階段181段を登って教室に来なければならないほか、1日に少なくとも階段を5往復するという。階段の両脇には緑の木が茂っている。運動場の周りには、大きなガジュマルの木が7-8本あり、太陽の日差しを遮り、涼しく心地良い環境となっている。孫校長は、「緑の植物や木を見ると、目の疲れを和らげることができると言われているので、以前の校長が私たちと一緒に植え、緑に囲まれた学校ができた」と説明する。
高い視力を保つためには、しっかりと栄養を摂る必要もある。湾塘小学校の児童は食欲旺盛で、その日の昼食では、鶏肉のから揚げや牛肉、ピーマンと豚肉の炒め物、そば、ライス、ニンジンとハクサイのスープなどをしっかりと食べていた。
「校内へのスマホ持ち込みは厳禁」というのが、湾塘小学校の鉄則。校内には公衆電話が6台あり、児童が無料で使える。そして、夜8時半になると、寮に戻って顔を洗ったり、歯を磨いたりし、9時に消灯となる。消灯されるとすぐに、ぐっすりと眠る児童たちの寝息が聞こえてきた。
孫校長は、「毎日3時間外で運動し、10時間半寝て、緑の木々に囲まれ、スマホもなく、栄養のバランスも良いというのが、児童の視力が高い原因なのかもしれない。そのうちのどれか一つを選ばなければならないとすれば、3時間外で運動することではないだろうか」と語る。
「学校に通うようになると、子供の目も悪くなる」と言われる昨今、「近視の児童0人」の湾塘小学校が私たちに示唆を与えてくれるかもしれない。(編集KN)
「人民網日本語版」2022年9月9日