四川省徳陽広漢市に住む謝子傑君(15)は高校入試が終わった後の夏休みを利用して、西蔵(チベット)自治区拉薩(ラサ)市まで自転車で行くという、「めちゃイケ」なチャレンジを敢行した。紅星新聞が報じた。
身長178センチの謝君は目を輝かせ、熱意にあふれており、同年代の子たちよりも大人びて見える。小さい頃から自立していたという謝君にとって、自転車でチベット自治区に行くというのは、急にひらめいた思い付きでは決してなく、「小さい頃から母親の影響で、美しく、神秘的なチベットにあこがれていた。母親は自転車でチベット自治区に行きたいとずっと思っていたが、僕の外祖父が反対したため、実現することはできなかった。それで、子供の頃からその願いを僕に語って聞かせていたので、今回僕が自転車で行くという決定を、両親は共に応援してくれた」と語る。チャレンジ精神旺盛な謝君は、胸をワクワクさせてこの日を待っていたのだ。
謝君が自転車でチベットに行くことを聞いた学校の教師も応援してくれたといい、「化学の先生がチベットに自転車で行ったことのある友達を紹介してくれた。そして、自転車旅行の経験やサバイバルスキルを教えてもらった」と話す。
薬や自転車修理セット、洗面用具、洗濯洗剤、着換えなどをリュックに詰め込み、家族が見守る中、謝君は6月17日、2240キロ離れたチベット自治区に向かって、人生初の自転車旅行をスタートさせた。
川蔵線を出発し記念写真を撮る謝君。
4000メートル以上の高山10座以上を走り抜ける自転車旅行
謝君はまず、広漢市から成都市に向かい、到着後は少しの休憩をはさんで、夢を叶えるべく川蔵線に沿って、自転車を走らせた。318川蔵線の周りには絶景が広がり、「人生で一度は走ってみたい」というのが、多くの人の夢となっている。
標高5000メートル以上の東達山や米拉山を含めて標高4000メートル以上の高山10座以上を通過し、人生で初めて突然の降雹を経験し、そこでしか見ることのできないたくさんの野生の動物に遭遇し、標高5000メートル以上の道路を走ってきた謝君は、「一番きれいな景色は旅の途中にあった。川蔵線の道路状況は複雑で、天気が変わりやすい、悪天候も多い。自転車旅行をする人にとっては、体力と根気が試される」と感慨深く振り返る。
318川蔵線の周りの景色。
旅行の途中で、いろんな所からやって来た、志を同じくするたくさんの人に出会い、互いに励まし合ったという。サイクリングチームに加わる人もいれば、離れる人もおり、夢や人生について語り合うことも多かった。そして、白い雲が浮かぶ青空の下で、気分爽快で自転車を走らせることもあれば、ぬかるんだ泥道を自転車を押して歩くこともあり、さらに、ひどい悪天候に遭遇することもあった。
川蔵線を走る途中で記念写真を撮る謝君。
ラサ旅行成功は夢の第1章に過ぎない
ラサまで残り180キロに迫った時、謝君は気分を高ぶらせていたものの、ホテルで自転車がパンクしたことに気付き、すぐに修理して早朝6時半に出発。「最後の標高5013メートルの米拉山を越えると、ラサに着くと思うと気分がとても高揚した。これまでの努力を絶対に水の泡にしてはいけないと思った」と振り返る。
旅行25日目だったその日、謝君のコンディションは絶好調だったといい、予定よりも4-5時間早い7月12日午後3時ごろ、ラサに到着した。
「向こうのほうにポタラ宮が見えてきた時の思いは言葉で表現できない。心があまりにもワクワクして、涙が出そうになった。ここ1ヶ月のたいへんな旅や野宿を思い出したほか、いろんな複雑な思いが絡み合っていた」と謝君。そして、両手で自転車を持ち上げて、ポタラ宮をバックに記念写真を撮影した。
川蔵線を自転車で走りラサに到着した謝君。
さらに、飛行機で先にラサに到着していた母親と弟が迎えてくれるというサプライズも待っていたほか、中国青年サイクリング聯盟が謝君のために自動車旅行成功の特別セレモニーを開いてくれた。謝君は同聯盟が立ち上げられて10年の間で、最年少で単独(両親の付き添いなし)での自動車旅行を成功させた少年となった。
サイクリング聯盟が謝君に授与した証書。
謝君は、「ラサに到着した日、僕を見つけた母親がただただ抱きしめてくれた。母親は、僕が夢を追いかけるのをずっと応援してくれていたものの、本当はずっと心配していたことを、僕も分かっている。僕の夢はラサへの自転車旅行では終わらない。志望の大学に合格したら、また、雲南省昆明市とラサを結ぶ『滇蔵線』や青海省西寧市とラサを結ぶ青蔵線を自転車で走り、広大な祖国のあちらこちらを旅したい。今回の経験を通して、何かを成し遂げるには、入念な準備と、絶対にあきらめない強い意志が必要であることが分かった」と、その目は既に新たな夢に向かっていた。(編集KN)
「人民網日本語版」2022年7月22日