日本で生まれ、東南アジアに広がる「マック難民」 (2)
○大半はホームレス、一部は家に帰らない学生や観光客
「マック難民」を構成しているのは、老若男女を問わない。彼らが「マック難民」になった経緯は、各人各様だ。長期にわたりファーストフード店に寝泊まりしている人々の多くは、家賃を払えない低所得者やホームレスだが、北京や上海などの大都市では、昼間は高級オフィスビルの建設現場で日雇い労働者として働き、夜はマクドナルドやケンタッキーなどの24時間営業ファーストフード店で泊る農村からの出稼ぎ労働者も少なくない。また、ホームレスもファーストフード店の「常宿」組で、この中には、小さい子供を連れた未婚の母親、帰る家も身寄りも無いお年寄り、保護者に棄てられたストリート・チルドレンも含まれる。
香港では数年前、新しいタイプの「マック難民」が誕生した。意外なことに、彼らは自宅のあるサラリーマンだ。これらのサラリーマンは、自分のことを「遊牧民」と自嘲し、通勤が不便なことや労働時間が不規則であることから、仕事するのに便利なように身の回りの私物を会社に置き、着替えと洗面用品だけを持参して公衆浴場で身体や髪を洗い、仕事が終わった夜更けにマクドナルドに戻り朝を迎える。自宅に戻るのは休日だけだ。このほか、自宅が非常に狭い、同居家族との仲が良くないなどの理由で、家に帰らず長期間マックで寝泊まりしている人もいる。
日本や韓国のメディアは「マック難民」について、「貧富の差の縮図、就業難の象徴であり、『隠れホームレス』である」という捉え方をしている。一方、中国では、最終電車に乗り遅れたなど特別な事情で一時的にマックを利用する人のほか、徹夜で勉強する必要に迫られている大学生や、宿泊費用を節約したい観光客がマクドナルドで夜を明かす、という状況が良く見られる。
期末テスト前になると、大学周辺のマクドナルドやケンタッキーは、テスト勉強に励む学生で朝まで満席になる。中国では、自習室を24時間開放している大学は極めて少なく、たとえあっても座席の確保が至難の技であるため、周辺のファーストフード店は学生達の「無料の自習室」になっている。
また、24時間営業のマクドナルドは、一部の個人旅行客の「宿泊代無料のホテル」にも変身する。貧乏旅行者にとって、海外の空港内にあるファーストフード店で臨時宿泊するのは、節約旅行のための技のひとつであると同時に、現地の実生活を体験する良い機会でもある。