中国では近年、ネコを飼い、ネコの虜になってしまう若者が増加している。また、実際にネコを飼うことはできないため、SNSや掲示板、アプリなどを通してネコの画像や動画を漁り、「ネコを飼いたい」という欲求を満たそうとする「雲養猫」という言葉も流行している。あるネコ育成シミュレーションゲームでは、バーチャルネコのやり取りや繁殖を行うことができる。同ゲームのオフィシャルサイトを見ると、売上額は790万ドル(約8億9270万円)に達し、7万匹以上のバーチャルネコが販売された。中国青年報が報じた。(文・胡印斌)
「雲養猫」が中国の今年のホットワードになった。「雲養猫」をすると、ネコを飼っているような気分になることができ、「癒しがほしい」という若者の願いを満たしてくれる。そして、リラックスできるだけでなく、悩みを忘れさせてくれ、喜びや満足感を感じさせてくれる。
また、「雲養猫」を使えば、ネコを飼う楽しさを味わうことができ、実際にネコを飼った時に生じる煩わしい事が起きることもない。そのため、インドア派で、1日3食はデリバリーで済ませている若者にとっては非常に便利なツールとなっている。
現在の若者、特に大都市で生活している人は、経済・社会の急速な発展がもたらした便利な生活を楽しんでいる一方で、生活のリズムは早く、ストレスも大きくなるばかりだ。また、普段の生活において、ストレスを解消する方法はそれほど多くない。技術はどんどん進歩しても、友人らと実際に会うという従来型の「交流」は逆に少なくなり、「ぜいたく品」のような存在になりつつある。多くの人はネットライフに慣れ、実際に会っているにもかかわらず、みんな下を向いて、スマホを通して言葉を交わすという若者さえいる。
人は、社会的動物で、社会化というのは、単なる外的要因というだけではなく、人が精神的に必要としているものでもある。社会化の過程で、人は自分を形成し、他の人と互いに何かを成し遂げることができる。しかし、現代社会において、人と人の距離が広がり、心のよりどころをなかなか見つけることができなくなっており、社会化も停滞してしまっている。そうなると、自然といろんなものに癒しを求めたり、自分の世界に閉じこもって自分だけで何かを楽しもうという発想になったりする。
ネコやイヌを飼ったり、「雲養猫」を利用したりするというのは、積極的な行動というよりは、自分だけの世界に閉じこもり、一人で満足感を覚えようとしていると言ったほうがいいかもしれない。この場合、ネコは、人が癒しを求める「客体」となるものの、若者の精神的世界の一部でもあり、ある種の「主体性」、「自己充足性」も備えている。
実際には、そのような現象は多くの若者が深刻な孤独感、悩みを抱えていることを反映している。都市はとてもにぎやかであるものの、それは表面的なものにすぎない。にぎやかな場所から静かな場所へ戻ると、人は自分の心と向き合わなければならない。仕事をしている時は、会社という囲いの中に閉じ込められているかのようで、仕事が終わるとまた囲いの中ような家に戻る。そのような生活では、今の若者が孤独を感じるのも無理はないだろう。
多くの先進国も同様の問題に直面しており、これは、モデル転換中である社会で必然的に生じる現象ともいえるのかもしれない。現実の世界では、さまざまなサブカルチャーが次々と登場しており、そのこととも関係があるのかもしれない。ただ、健全で正常な社会なら、繁栄した世界の裏で孤独を感じている若者を決して無視してはならないということに気付くべきだ。(編集KN)
「人民網日本語版」2018年1月2日
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