日本の神奈川県横浜市にある横浜臨海公園から瑞穂ふ頭の方を眺めると、巨大な風量発電装置が目に入る。風力発電装置は人気のない郊外に設置されることが多いが、この高さ78メートル、風車の直径が80メートルになる装置は都市部にあり、横浜市と日本の関連企業が協力して展開するモデルプロジェクトだ。発生した電気は水電解装置による高圧水素の生産に利用され、水素は京浜臨海地区の青果卸売市場で活躍する水素燃料電池ターレット式構内運搬車12台に供給されている。風力エネルギーから電力へ、さらに水素エネルギーへというプロセスの中で排出されるのは水だけで、温室効果ガスや有害な気体は排出されない。
このプロジェクトは水素エネルギーの利用を積極的に推進しようとする横浜市の取り組みの1つだ。同市は公用車として水素を燃料とする燃料電池自動車(FCV)を13台購入し、今年はさらに3台を購入するという。また水素燃料電池車を購入した個人と企業へ補助金を交付している。
横浜は「水素エネルギー社会」へ向かって努力する日本の縮図だ。日本はエネルギー自給率が低く、約6%しかない。水素エネルギーは供給源が幅広く、燃焼温度が高く、クリーンで汚染を発生させず、利用範囲が広いといった優位性があり、21世紀に最も発展の潜在力を秘めたクリーンエネルギーとされる。そこで日本は水素エネルギーの発展に積極的で、日本のエネルギー構造のモデル転換を促進し、エネルギーの安全保障をはかり、気候変動に対応しようとしている。
日本政府が温暖化対策の国際的枠組「パリ協定」に基づいて設定した汚染物質排出削減目標は、2030年度の温室効果ガスの総排出量を13年度比で約26%削減するというものだ。日本は水素エネルギーの普及推進、「水素エネルギー社会」の実現を温室効果ガス排出削減に向けた重要な足がかりとしている。
2017年12月、日本政府は「水素基本戦略」を発表した。水素の生産供給、水素の利用の2つの側面から計画を制定し、段階を追って多くの具体的な目標を打ち出した。30年に水素コストを1ノルマルリューベ(Nm3)あたり100円から30円に引き下げる。30年をめどに水素燃料電池車を80万台に増やす。水素を供給する水素ステーションを30年までに900ヶ所に増やす。水素燃料電池で走るバスを30年までに1200台に増やす、などの目標が含まれる。
東京の街中を歩くと、時々ガソリンスタンドの近くに「H2」という巨大な表示があるのを目にする。この表示がある施設には高圧水素を供給する水素ステーションがある。現在、日本にはこうしたステーションが約100ヶ所あり、その半分は株式会社タツノが製造したものだ。
株式会社タツノは1911年の創立で、最近は水素燃料電池車向けの高圧水素充填ステーションの開発・製造に力を入れている。同社の横浜工場を訪れると、同社が製造した日本初の水素屋内充填設備や水素供給設備の精度を測定する測量車を見ることができた。広報担当の森英泰さんは工場内にある水素充填ステーションで、「ガソリンスタンドに比べ、水素は圧縮されているので安全性や気密性に関する要求が高い」と説明してくれた。龍野廣道社長によれば、「中国は水素エネルギーなどの新エネルギーの発展をめぐって独自の優位性があり、新エネルギーの発展を非常に重視してもいる。日本は水素エネルギーの利用率を引き上げたいと考えており、中国との協力強化が必要だ」という。
14年12月、トヨタは燃料電池車の量産車「MIRAI(ミライ)」を日本国内で発売し、業界で広く注目を集めた。これは世界で初めて一般の消費者向けに発売された燃料電池車だ。3分間の水素充填で650キロメートルの走行が可能で、環境保護性能は完全電気自動車に近いが、航続距離はより長い。今年3月末現在、日本での販売量は2800台を超えた。ただ価格が高いことと水素充填ステーションの数が十分でないことが、水素燃料電池車の普及を制約するボトルネックとなっている。(編集KS)
「人民網日本語版」2019年5月5日