トランプ政権が中国に対して仕掛けた貿易戦争は、米国の経済に対し、「米国を訪れる中国人観光客の減少」という別の形のダメージを与えているようだ。中国新聞網が米国の中国メディア・米国中文網の報道を引用して伝えた。
英オックスフォード・エコノミクス (Oxford Economics)傘下のツーリズム・エコノミクス(Tourism Economics)が発表した最新調査報告によると、2018年初めに中米両国の貿易摩擦が始まって以来、米国を訪れる中国人観光客は次第に減少している。同報告では、「緊張状態が続けば、来年、中国人観光客は延べ200万人減少するだろう。つまり、2年あまりの貿易摩擦によって、米国観光業にもたらされる損失は110億ドル(1ドルは約106.6円)に上る可能性がある」との見通しが示されている。
ツーリズム・エコノミクスの予測では、2018年、訪米中国人観光客数が大幅に減少したことによる米国観光業の損失は、約20億ドルに達する。また、2019年に入り、訪米中国人観光客数は延べ約65万人減、消費支出は38億ドル減となっている。米国のGDP総額20兆ドルのうち、観光消費が占める割合はほんのわずかではあるが、現地経済にとっては重大な意味を持っている。特に、経済発展の減速という大きな局面において、観光業を拠り所とする中小企業に及ぼす影響は、特に際立っている。
中国は、米国観光業にとって第3位の海外観光客源国であり、中国人観光客の1渡航あたりの平均消費額は5800ドルで、他のどの国も上回っている。米国観光業にとって最大の海外顧客源国である英国の観光客一人当たり消費額は2500ドルにとどまっている。
ジョージワシントン大学でホテル・マネジメントを教えるLarry Yu教授は、「中国人観光客は、米国にとって非常に重要な存在だ。というのも、観光消費額で見ると、中国は世界トップに立っているからだ。ワシントンD.Cエリアにとって、中国は最大の海外市場であり、現地経済にとって極めて重要だ」と指摘した。
ツーリズム・エコノミクスの統計データによると、2018年に米国を訪れた中国人観光客の数は、前年比で5.7%減少した。米国に入国した中国人の数が減少したのは、14年ぶりのことだった。2019年1月から6月に中国に入国した米国人の数も、前年同期比で2.2%減少した。
このほか、ドル高・人民元安のすう勢も、中国人の米国訪問を抑制する結果となっている。
観光経済学の学者であるジョーダン・ローゼンタール氏は、「為替変動によってもたらされる影響は、中国人観光客が以前予約しておいた米国ツアーの実際価格が上昇することだ。そして米国到着後の費用はさらに高くなる。彼らは下落した人民元のレートで米ドルに両替せざるを得ないからだ。そしてドルの上昇傾向は今後も続くだろう」との見方を示した。(編集KM)
「人民網日本語版」2019年8月26日