中国のQ&Aサイト・知乎で「裸辞(転職先を決めぬまま退職すること)」と入力して検索すると、2000件以上の質問がヒットし、1万人以上がフォローしていた。なかでも、「『裸辞』をするって、どんな感じ?」という質問には、400人が回答し、閲覧回数は112万回を超えていた。工人日報が伝えた。
求人サイト・智聯招聘が発表している2019年中間期の在職者状況を分析した報告によると、在職者の90.4%が、「今年の上半期『裸辞』をしたいと思ったことがある」と答えた。そう思ったことがある人の割合は、70後(1970年代生まれ)と80後(1980年代生まれ)より、90後(1990‐1994年生まれ)と95後(1995‐1999年生まれ)のほうが高かった。「裸辞」をしたいと思った一番の原因は、「キャリアアップが見込めない」で、次に多かったのが「給料や待遇が悪い」だった。報告によると、2019年上半期、転職に成功したホワイトカラーは3割のみで、17%は転職して給料が下がっていた。
「仕事がハードすぎる」も「楽すぎる」も「裸辞」の原因に
27歳女性の肖肖さんは、修士課程を卒業後、北京のある有名なIT企業に入社し、商品管理を担当するようになり、2年後にIT系ユニコーン企業に転職した。それから5ヶ月後、会社は996勤務(朝9時~夜9時×週6日)を強制していないものの、チーム全体が夜9時、10時まで働くという生活になっていることに気づいた。同僚が残業しているのに、「自分だけ8時ごろ帰ると、浮いてしまい、変な空気になる」という。
また業務量が多いだけでなく、社長も残業を奨励。例えば、新入社員が入ると、初出社の日は、会社の様子を知るために、夜9時ごろまで会社にいるよう指示していた。肖肖さんはそうしたことにどうしても納得できず、勤務状態が次第に悪化していき、週末以外の勤務時間中はまるでうつ病になってしまいそうな感じさえするようになってしまったのだという。
会社は順調に成長している上、仕事をコロコロ変えると自分のキャリアアップにも影響するのではないかと悩みはしたものの、色々と考え上司と話し合った結果、すっかり失望させられ、結局辞めることにしたという。「自分の業務内容や手配の仕方が合理的でないことなどを伝えた。でも、『すぐにそれら問題を解決することはできないので、もう少しがんばってみるように』というのが上司の答えで、絵に描いた餅ばかりだった。それで、もう辞めようと思った。その時、新入社員数人が辞めたいと考えていた」と肖肖さん。
肖肖さんと同じく、80後の劉援さんも、仕事が非常にハードで、残業時間も長いため「裸辞」することにした。2013年に大学を卒業し、大連のIT企業に入社した劉さんは、夜中の1-2時まで残業する毎日が続いた。「このままだと過労死すると思った。それで、迷うことなく、仕事より健康を選んだ。辞める時に迷いはなく、しばらくゆっくりしたいと思った。卒業したばかりの学生というものは憂慮するようなことも少ないし、それほど先の事まで考えていないと思う」と劉さん。
一方、郭鋭さんが「裸辞」することにした理由は、仕事がハードすぎるからではなく、なんと「楽すぎる」からだった。2016年に修士課程を修了した郭さんはフォーチュン・グローバル500に入る外資系企業に入社し、自動車企業の早期事業参画に携わるようになった。仕事の環境や待遇、福利厚生はどれもよく、制度も整っていたのだが、可能性も極めて限られていたという。そのため、「快適すぎて、ゆでガエルのような感じだった」と振り返り、「卒業したばかりの僕は、安定さを求めていたわけではない。たとえそのまま1、2年もすれば、出世して、給料が上がるとしても、『裸辞』することにしたと思う」とした。