夏のギラギラと照りつける日差しの猛暑日でも、冬の寒風が吹き雪が降りしきる日でも、中国の街中では、ヘルメットをかぶり、ユニホームを着て、後ろに配達ボックスが取り付けられた電動バイクやバイクに乗り、飲食店に料理を受け取りに行ったり、料理を注文者に配達したりと、走り回っている人の姿を目にすることができる。彼らは通常「デリバリー配達員」と呼ばれ、今年2月に発表された中国国家職業分類リストに、「ネット注文配達員」という名で新職業として正式に盛り込まれた。人民日報が報じた。
では、デリバリー配達員は毎日、どんな1日を送っているのだろうか?どんな苦労を味わい、どんな楽しみを得ているのだろうか?このほど、デリバリープラットフォーム・美団のデリバリー配達員・秦帥さんの1日を追い、共にその仕事を体験してみた。
デリバリー配達員の秦帥さんと一緒に配達に向かう人民日報記者・王珂(写真右、写真提供は人民視覚)
「1分早いのはいいが、1分遅いのは絶対にダメ」
食事時間帯になると、秦さんはエレベーターをあまり利用せず、階段を使う。一気に22階まで登っても平気だ。
1年のうち、今は最も暑さが厳しくなる時期で、その日も、午後の気温は34度を超えていた。記者はデリバリー配達員の秦さんと一緒に、道路脇の日陰で、アプリから送られてくる配達依頼を待った。
12時15分、「来た!急ごう。すぐ近くのショッピングセンターだから」。秦さんはそう話しながら立ちあがり、小走りで飲食店に料理を受け取りに行った。
料理を受け取ると、秦さんは配達先の住所を見て、「ツイてる!」とつぶやいた。
しかし配達先が近くのオフィスビルの806号室となっているだけで、記者には何が「ツイてる」のか分からなかった。
秦さんによると、「10階以下ならツイてる」のだという。電動バイクに乗り、エンジンをかけ、出発するという一連の動きは、記者にとって、簡単なことではない。強い日差しに照らされ、バイクに数分乗っているだけで、汗が噴き出してきた。十数分後、配達先のオフィスビルに到着した。その時点で、配達時間制限までまだ10分残っていた。時間に余裕があるので、バイクを止めて一服したいと思っていたが、傍らの秦さんは、「止まらないでこのまま急ぐぞ!」と叫んだ。
再び小走りで、オフィスビルに入ると、1階のエレベーターが見えたので、それに乗ろうとすると、秦さんは、「このオフィスビルのエレベーターは、いつも並ばないと乗れない。食事時間帯は、制限時間内に配達するために、エレベーターはあまり使わずに、階段を使う。急ごう!10階以下なら大したことないから」と階段に向かった。
12時42分、秦さんと共に8階に到着し、料理を注文者に届けることができた。スマホに表示されている配達制限時間まで残り3分しかなかった。思わず口から出た言葉は、「危なかった!」の一言。疲労のあまり、息を切らしながら階段に座り込んだ。
早朝6時に、専用アプリを開いてオンラインにし、夜の8時頃にオフラインにして配達依頼の受け取りを終了するという秦さんは、配達員を始めて1年ちょっと、これまでの走行距離は累計で3万3674キロに達している。1日の配達数は数十件で、走行距離は100キロ以上。今月の「配達数ランキング」を見ると、秦さんは1179件の配達をこなし、担当エリアの1位を手にしており、いわゆる「配達キング」だ。