ある夏の日の午後、長白山の支脈である老爺嶺の森の奥深くで、1頭の野生のアムールトラ(東北虎)が草の上にだらしなく横たわり居眠りをしていた。この光景は「天地空一体化自然資源観測システム」を通じ、アムールトラ・ヒョウ生物多様性国家野外科学観測研究ステーションの専門家に確認された。このリアルタイムで高効率の研究手段は、以前の彼らならば想像もできなかったものだ。
馮利民氏は過去の科学研究におけるアムールトラとの「時差」について、「当時は簡単な赤外線カメラによる観測で、バッテリーを3カ月で交換し、3カ月で動画を取得し、3カ月で分析・研究していた。トラの生存状況を知るために、1年もかかることが多かった」と形容した。
野生のアムールトラをリアルタイムで観測するにはどうすればいいのだろうか。森にスマート観測ネットワークがあればどうだろうか。
科学研究チームは紆余曲折を経て、華為(ファーウェイ)及び吉視伝媒と協力し、森林内の既存の防火見張りタワーを利用し700MHzネットワークの設置に成功した。
科学研究チームと複数のテック企業が協力し、スマート赤外線カメラを開発した。これはネットワークに接続し、高画質画像及び動画のリアルタイム伝送が可能だけでなく、土壌、水質、大気などのセンサーの生態的要因を採取・伝送できる。
1頭のアムールトラの縄張りの面積は約200-700平方キロメートルの間だ。野生のアムールトラ・ヒョウの保護は一つの種の保護に留まらず、連続性のある生息地、健康的な植物構造、整った食物連鎖をよりよく保護し、繁殖環境を干渉されないようにする必要がある。
数カ月の活動量が1日に短縮され、科学研究者はトラとの「時差」を完全になくした。郎報が絶えず伝わってきている。設置された大量のスマート赤外線カメラにより、アムールトラの数が急増しているのが観測された。アムールトラの6つの繁殖家族、アムールヒョウの5つの繁殖家族が観測されており、そしてアムールトラ・ヒョウの子供が30-35%の割合を占めている。これは理想的な個体群の構造・状態だ。
科学研究チームは人工知能(AI)を同システムに応用した。ビッグデータ解析により異なる野生動物の種類を識別し、個体群と生息地の現状を研究できる。馮氏は「これは私たちの研究方法の大きな変化だ」と述べた。
同システムは将来的にアムールトラ国家公園全体を網羅し、1万4600平方キロメートルのフルカバーを実現する。十数万台のスマートモニタリング端末が公園内の随所に設置される。(編集YF)
「人民網日本語版」2020年7月30日