東京都荒川区某所に、血縁関係のない貧しい一家が住んでいる。一家の収入源は「おばあちゃん」の亡き夫の年金、「夫婦」と「父子」の万引きによる所得だ。この一家は両親に虐待されている少女と出会うが、彼女をこっそりと引き取って育てることを選ぶ。これは2018年にカンヌ国際映画祭でパルム・ドールを獲得した日本映画『万引き家族』のプロットで、実際にあった事件を基にしている。監督の是枝裕和氏は日本の貧困層に何度もレンズを向けてきた。(半月談)
■世界3位の経済大国で「新たな貧困」が表面化
アジアで最も早く先進国入りした日本は現在世界3位の経済大国だが、近年新たな貧困という大きな問題を抱えている。
新たな貧困層は都市部在住の高齢者、女性、子供が中心だ。この貧困問題は少子化と高齢化の進行に伴い、社会の発展にとって足枷となる恐れがある。
貧困層の多くが未発展地域や末端の農村部に集中する中国と異なり、日本の新たな貧困層はほとんどが都市部、さらには首都圏に居住している。また、以前は物質的に余裕のある環境に暮らしていた人が少なくない。厚生労働省の統計では、1970年に7%だった65歳以上の高齢者貧困率は1994年には14%に上昇し、2018年には28%へとさらに倍増、2040年には35%に達する見通しだ。
日本経済新聞の編集委員を務めた山形健介氏は取材に対し、「年を取ることと貧困との間に必然的な関係はないが、高齢者は収入や貯蓄が減り、体力的にも衰え、医療や介護面の支出が増えるため、貧困に陥る可能性が高まる。また比較的特殊な社会背景もある。現在の日本の高齢者はほとんどが第1次ベビーブーム世代かそれよりも上の世代だ。彼らは日本の高度経済成長期に中核を担った人々で、現役時代には車の購入や買い替え、ゴルフをすることが習慣となっていた人が少なくなく、定年退職後も高支出習慣を変えることが難しく、年金ではまかないきれなくなっている。不動産価格の高い時期にローンで住宅を購入した、あるいは定年退職近くになって住宅を購入した人々もおり、定年後もなおローンを背負っている。また、青壮年層の大都市集中に伴う老老介護(例えば70歳の高齢者が90歳の両親を介護するなど)の増加も、高齢者が貧困に陥る原因の一つとなっている」と指摘する。
厚生労働省と国際連合児童基金(ユニセフ)の統計によると、日本の子供の相対的貧困率は13.9%となっている。時間軸で見ると、日本の子供の貧困率は1985年の10.9%から2012年には16.3%に上昇した。平均して子供の6人に1人が貧困状態にある計算だ。日本政府は近年、育児支援策を少なからず打ち出しており、子供の貧困率は2015年から多少下がり始めたが、根本的問題はまだ効果的に解決されていない。
子供の貧困の問題には複合的要因もあり、「負の連鎖」が際立っている。例えば、離婚率の大幅な上昇と未婚の出産の増加がシングルペアレント、特にシングルマザーの増加を招いている。しかもシングルマザーは正社員ではなく低収入労働に就いていることが多いため、子供も貧困状態に陥り、教育や健康に影響が生じやすい。