このほど発表された「科学技術の人的資源発展研究報告書(2018)」の研究結果によると、3年制大学から4年制大学への編入、死亡、出国などの要素を取り除けば、2018年末現在の中国における科学技術の人的資源は1億154万5000人にのぼり、引き続き世界一を維持した。質の向上は今後の科学技術の人的資源発展戦略の重点になっている。科技日報が伝えた。
科学技術の人的資源の研究に長期にわたり従事してきた中国科学技術協会革新戦略研究院の黄園淅副研究員は、同報告書の研究・作成に参加した。黄氏は「科学技術の人的資源が科学技術人材とイコールではないことを明らかにしておく必要がある。科学技術の人的資源とは科学技術の職場で勤務する人のほか、科学技術活動に従事するポテンシャルを持つ人も含まれる。一国もしくは一地域の科学技術者のストックと供給能力を反映している」と指摘した。
就業者1万人あたりR&D研究者数は、一国のイノベーション力を測る重要な指標であり、科学技術の人的資源のレベル及び質を測る重要な指標でもある。同報告書によると、中国の2017年のR&D研究者数は世界一だが、就業者1万人あたりR&D研究者数は年間22.4人のみで、フランスの103.4人や日本の100.1人と比べると大きな開きがある。
同じく開きがあるのは、科学技術の人的資源の密度にも格差が存在する。つまり、科学技術の人的資源が総人口に占める割合だ。一般的に、一国もしくは一地域の科学技術の人的資源の密度が高いほど、科学技術革新のポテンシャルが高い。黄氏によると、中国の科学技術の人的資源の密度は2005年以降に上がり続けているが、世界の先進国と比べるとまだ大きな向上の余地が残されている。
同報告書は「科学者オンライン」の中国科学研究者データバンクを研究サンプルとし、無作為抽出により10万人分の整った履歴書を選び、科学研究者の流動状況を分析した。
浙江清華長江デルタ研究院地域革新ビッグデータセンターの智強センター長は「その結果によると、中国の科学研究者の流動範囲は117カ国をカバーしている。流動先を見ると、中国の科学研究者の流動は主に純流出しているが、近年は国内回帰の流れが強まり続けている。これらの人々は主に一部の先進国から回帰している」と説明した。
中国人事科学研究院の呉帥副研究員はその理由について、「これは中国経済、科学技術力の急成長、文化的な親和性といった要素との関連性が高い」と分析した。
呉氏はさらに「中国経済の高度成長と産業構造のモデルチェンジ・高度化に伴い、国内外の生活の格差が縮小し、多くの革新・起業の機会が生まれている。中国の科学研究への投資が拡大を続けていることも全世界で注目されている。また人材発展体制・メカニズム改革の深化に伴い、科学研究者の待遇も目に見えて改善されている。こうしたことは海外科学研究者の国内回帰の直接的な動機だ」と分析した。(編集YF)
「人民網日本語版」2020年8月13日