中国の興行データを集計する猫眼専業版の統計によると、春節(旧正月、今年は2月12日)の連休期間中(2月11日から17日まで)の映画の興行収入は78億4500万元(1元は約16.45円)で、動員者数は延べ約1億6000万人だった。うち、「唐人街探案3(僕はチャイナタウンの名探偵3)」は35億6500万元でトップ。以下、「你好、李煥英(Hi、 Mom)」27億3000万元、「刺殺小説家(Assassin in Red)」5億4000万元と続いた。
近年の春節映画を見ると、毎年のように「ダークホース」が登場している。今年も例外ではなく、15日から17日までの3日間、「Hi、 Mom」の1日当たりの興行収入が「僕はチャイナタウンの名探偵3」を上回り、「ダークホース」となった。
「Hi、 Mom」は、監督と主役を務める女性コメディアンの賈玲(ジャー・リン)と、すでに故人となっている彼女の母親との実話を元にした脚本で、娘が1980年代にタイムスリップして青春時代の母親に会いに行くというストーリー。タイムスリップしたことで生じる一連のちぐはぐなやり取りが笑いどころとなっているが、その根底には、誰もが母親に感じているかけがえのない感情を描き出しており、見る人が深い共感を覚えることができるようにしている脚本家の努力が垣間見える。
同作品に出演している賈玲や沈騰(シェン・タン)は、中国で目下大人気のコメディアン。加えて、ノスタルジーを感じさせる母親への思いをテーマにしていることが、家族団らんを楽しむ春節のムードともぴったり合っている。
小説「瘋狂電影圈」の作者で脚本家の莫争は、「『Hi、 Mom』は、非常に温かみのある仕上がりになっている。『母親』をテーマにした作品で、1988年の映画『媽媽再愛我一次 (Mother love me once again)』に似ていて、多くの人がそれを見て共感を覚える。人気のタイムスリップやハラハラするシーンも見所で、目新しさを感じさせるおもしろいシーンも満載だ」としている。
あるブロガーは、微博(ウェイボー)で、「『Hi、 Mom』は映画としてはこまごまとした欠点がいくつもある。コントを集めてくっつけたような感じが否めない上、そのシーンやセリフも単調で、どこかで見たようなシーンもある。でも、私はこの作品がとても好きだ。なぜなら、監督の誠意を感じるからだ。そこにはもくろみなどなく、興行収入よりも、彼女の母親に対する思いが優先されている。映画では、人数の足りない母親のバレーチームが奇跡的に勝利するようなこともなく、熱血でも励ましに満ちてもいないものの、そのベースには女性の視点から、母親に対して少しずつ理解を深めていく様子が丁寧に描かれている。賈玲の監督としてのレベルはまだまだだが、観客に対して非常に真摯に向き合っていることは間違いない」と評価している。
つまるところは、その表現する感情が、リアルで心が込められているかが一番重要であり、それが映画がヒットするかのカギとなる。賈玲は、まだ本当の意味での一流の映画監督になったとは言えないものの、彼女の作品に込められている感情は、どんな巨匠にも決して負けないだろう。それこそが、多くの人が彼女の作品に心を打たれ、お金を出してそれを鑑賞している本当の理由だ。ここ数日、映画を鑑賞したネットユーザーらは次々と、微博に自分の母親が若かった頃の写真を投稿している。こうした現象からも、この作品が人々の思いにぴったりマッチしたことが見て取れる。(編集KN)
「人民網日本語版」2021年2月18日