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日本語教育の歴史を刻む 北京第二外国語学院第39回演劇大会

人民網日本語版 2021年06月11日09:33

北京市内の北京第二外国語学院で8日午後、同学院の学生たちによる日本語の演劇大会が行われた。同大会は1979年から行われており、今回で39回目。新型コロナウイルス感染拡大を受けて2020年は中止されたが、今年は2年ぶりの開催となった。今回の大会には予選を勝ち抜いた5クラスが参加し、日ごろの日本語学習の成果と熱のこもった演技を披露した。今回の大会のテーマは、「史」。1979年から続けられているこの演劇大会の歴史がまた新たに刻まれ、そして同大学の日本語学習の歴史も感じさせる大会となった。人民網が伝えた。

決勝に進んだクラスの演目は、芥川龍之介の作品「藪の中」、シェイクスピアの名作「ヴェニスの商人」、モーパッサンの「首飾り」、瞿秋白を題材にした「ここはいいところ」、そして曹禺の代表作「雷雨」の5作品。日本や西洋の古典的作品のほか、中国の革命家を題材にした作品、中国を代表する劇作家の名作が揃い、バラエティーに富んだラインナップとなった。

芥川龍之介作品を巧みにアレンジした「藪の中」

日本語学部三年四組による「藪の中」は、芥川龍之介の同名小説をコンパクトにアレンジした。判官(原作では検非違使)への証言と藪の中での出来事の再現シーンを俳優を分けて表現する手法は、演技や演出などの面で難易度の高いチャレンジングな試みだった。判官が中国風の衣装を身に着け、背景にも「公正廉明」という文字を映し出すことで、日本の作品を中国人である自分たちに引き寄せ、中国人に訴えかけようとする意気込みが感じられた。

シェイクスピアの名作から法廷シーンを切り取った「ヴェニスの商人」

二年二組による「ヴェニスの商人」は、動きの少ない法廷シーンを巧みな演技で飽きずに見せることに成功していた。特に、裁判官に変装したポーシャが機知に富んだ尋問で金貸しのシャイロックをやり込めるくだりは、緊迫感あふれる展開で観客を引き込んだ。

巧みな舞台演出が光ったモーパッサン作の「首飾り」

二年一組による「首飾り」は、借りた首飾りを失くしてしまったことで思わぬ運命の転換を経験することになった女性の人生を表現。華やかな舞踏会のシーンや、少ないアイテムをうまく使いまわしてシーンごとに違う場所を表現する手法、照明効果を活かした場面転換など、舞台演出上の工夫が光った。

革命に身を投じた文学者・瞿秋白の最期を描いた「ここはいいところ」

二年三組による「ここはいいところ」は、文学者であり、政治にも身を投じて中国共産党の初期の指導者となり、また「インターナショナル」の歌詞の中国語翻訳者としても知られる瞿秋白が、国民政府軍に捕らえられて銃殺刑に処されるまでを描いた意欲作。抑えた演技と演出で、瞿秋白の静かな情熱を見事に表現した。

中国の代表的劇作家・曹禺の名作から、有名なラストシーンを再現した「雷雨」

そして日本語通訳コース院生一年による「雷雨」は、中国の代表的劇作家である曹禺の名作を堂々とした重厚な演技で再現。特に、蘩漪を演じた方銘楊さんは迫真の演技で観客を引き込み、封建社会に生きる女性の悲しさや怒り、葛藤を見事に表現し、人民芸術劇院の舞台を想起させた。

日本語については、作品や学生ごとに多少ばらつきは見られたが、総じてしっかりとした発音が身についており、概ね問題なく聞き取ることができた。なかにはイントネーションも含めて非常に自然な日本語でセリフを言うことのできる学生もおり、日ごろの努力がしのばれた。

厳正な審査の結果、原作のクライマックスシーンを見事に再現した「雷雨」が一等賞に輝いた。二等賞には静かなトーンながら観客に訴えかける演出が光った「ここはいいところ」と、脚本と演技に工夫があった「藪の中」が選ばれた。最優秀脚本賞は、「藪の中」と「ここはいいところ」に贈られた。そして最優秀主演男優賞は「ヴェニスの商人」で金貸しのシャイロックを嫌味たっぷりに演じた殷海峰さん、最優秀主演女優賞は「雷雨」で蘩漪を渾身の演技で表現した方銘楊さんがそれぞれ受賞。また、最優秀脇役(助演)賞には「ここはいいところ」で自然な日本語と演技が光った宋希濂役の張聖沢さん、イオン賞には「藪の中」で死んだ武弘の妻・真砂を熱演した楊煥然さんがそれぞれ選ばれた。(文・勝又あや子)

「人民網日本語版」2021年6月11日 

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