ガンは飛び去った後に鳴き声を残し、水は流れ過ぎた後に跡を残し、新型コロナウイルスは感染後に抗体を残す。科技日報が伝えた。
アメリカ国立野生動物研究センターの学者が中和抗体を追跡し、新型コロナウイルスが米国の野生動物の間で発生した時期を2019年までさかのぼった。
関係論文によると、米国のオジロジカの2019年の検体検査のうち、1件の検体から新型コロナウイルスの抗体が検出された。この結論の発表により新型コロナウイルスの感染経路への認識が再び更新された。9日、本件についてウイルス追跡専門家にオンラインによる単独インタビューを行った。
■2つの「1度もない」
取材を受けた専門家は2つの「1度もない」を挙げ、この発見がなぜ非常に重大であるかを説明した。2つの「1度もない」とは、野生動物から新型コロナウイルスの中和抗体が見つかったことが1度もなく、野生動物からヒトよりも早い新型コロナウイルスの感染が見つかったことが1度もないということだ。
前者は「新型コロナウイルスが自然宿主からヒトへ」というルートの非常に重要な「ピース」を補った可能性が高い。同専門家によると、野生動物とヒトが接触する機会は比較的少ないため、2019年にヒトから野生動物に感染した可能性は実際にはそれほど高くなく、逆に野生動物からヒトへの可能性が比較的高い。この発見はウイルス感染経路の「単一方向のピース」を見つけたということになる。
中国・世界保健機関(WHO)新型コロナウイルス起源解明合同調査報告書は、新型コロナウイルスが自然宿主から中間宿主を経てヒトに移った可能性が、いくつかの経路のうち最も高いとの見方を示した。オジロジカという新たに人々の視野に入った「ウイルスキャリア」がその移行種であるかについては、さらなる調査が必要となる。
後者は時間的に、新型コロナウイルス発生の時期を大幅に早めた。ウイルス起源解明は犯罪者の「巣窟」を追跡するようなものだ。一方で、同研究は「警察」がついに監視カメラからより早い犯罪経路を見つけたようなもので、起源解明の取り組みを大きく前進させた。
専門家は、「2019年にその他の動物が新型コロナウイルスに感染したとする記録は今の所ない。この研究は2019年前後に調査を行っており、2018年はゼロ、2020年は3件、2021年は40%が感染だった。これらのデータは、2019年はオジロジカが新型コロナウイルスに感染したばかりの段階であることを意味し、その間に何が起きたかについてはさらなる研究を行う価値がある」と述べた。
■科学者「新型コロナ起源解明に関する米国での調査を開始すべき」
専門家は「これは非常に重要な起源解明の手がかりだ。今後は当時のオジロジカの検体のさらなるPCR検査を行い、同時により大規模な調査を行うべきだ。早期検体から核酸が検出され、核酸配列データが得られ、そして早期のヒト感染者のものと比較すれば、『真の起源』に関する判断が得られる」と述べた。
米国ではすでに複数の専門家が同様の観点を持ち、野生のシカ科を新型コロナウイルスの宿主として調査すべきとしている。
3月15日に「生命科学」に掲載された「オジロジカが新型コロナウイルスに感染しやすいことが研究で明らかに」という文章によると、研究者はオジロジカとヒトの新型コロナウイルス受容体が非常に近いことを発見した。そのため新型コロナウイルスは中間動物宿主(例えばオジロジカ)を通じヒトに感染した可能性が高い。
アメリカ農務省の感染症研究専門家のミッチェル・パルモー氏のチームは5月10日、「Journal of Virology」に発表した論文の中で、「新型コロナウイルスが動物宿主からヒトに感染した可能性があることを示す証拠があり、そしてオジロジカは新型コロナウイルスに感染しやすい。これらの発見はいずれも、野生のシカ科を新型コロナウイルスの潜在的な宿主、または発生源に組み入れて調査することをサポートしている」とした。
米国のオジロジカが2019年に新型コロナウイルスの抗体を持っていたという最新の重大発見により、起源解明の答えまであと一歩に迫るかもしれない。中国・WHO新型コロナウイルス起源解明共同研究の中国における調査では、中国各地のおびただしい数の家畜・家禽、野生動物などの検査を行ったが、新型コロナウイルス(核酸や抗体)が見つからなかった。
新型コロナウイルス起源解明の米国における調査の開始により、新型コロナウイルスの起源に関するより多くの真相が得られることを示す研究結果が増えている。(編集YF)
「人民網日本語版」2021年8月12日