江西省萍郷市芦渓県源南郷石塘村にある彭会雲さんのネーブルオレンジ畑を見て、「土はどうして炭のように真っ黒なのか?」と感じる人も多いだろう。そんな疑問に、彭さんは笑顔で、「その通り、石炭だからだよ」と答える。
江西省萍郷市芦渓県源南郷石塘村のネーブルオレンジ畑(写真提供・江西省貧困者支援弁公室)。
彭さんのオレンジ畑は以前、「思古塘」と呼ばれる鉱山だった。山の下では、炭鉱を掘って、石炭が採掘され、山の上には炭坑の廃石が山積みにされていた。1990年代、石塘村の90%の村民は、炭鉱で働いて生計を立てており、彭さんも炭鉱の作業員の一人だった。
2009年の中国全土の森林資源精査結果によると、萍郷市には生態系修復が必要な鉱山跡地が約6000ヘクタールあった。「豊かな自然は金銀同様の価値がある」という理念が少しずつ人々の心に刻まれるようになるにつれて、萍郷市の幹部も、鉱山跡地に注目するようになり、「生態系を修復すると同時に、社会資本を呼び込んで、市民の生活を豊かにする産業を発展させることはできないか」と考え始めた。
約66.6ヘクタールの鉱山跡地が茶園に変わり、村民に毎年、1000万元以上の経済収入をもたらしている浙江省湖州市埭渓鎮東紅村の婆棚山(人民図片・鄧徳華)。
江西省のあるエコ農業企業の責任者である魏遠忠さんは、「当時、荒れ山を探していたら、林業当局の職員からこの鉱山を紹介された。その当時、鉱山の仕事を辞めていた彭さんは村の党委員会の主任を務めていて、私たちが鉱山でネーブルオレンジを栽培する計画であることを聞いて、『炭鉱の廃石が山積みになっているここで、オレンジを栽培することなどできるのだろうか?』と興味を持ってくれた」と振り返る。
魏さんは、鉱山でネーブルオレンジを栽培する自信があったという。なぜなら、土壌成分を検査する専用設備を使って、地表には鉱山の廃石が山積みになっているものの、下の土壌への影響はほとんどないことを確認されたからだ。油圧ショベルで整地し、化学肥料をまき、買い取ったワラを埋めて、土壌を改善し、山の斜面を、ネーブルオレンジ栽培ができるように、帯状に整地した。そして、2年目に、ネーブルオレンジの木が植えられた。
鉱山跡地が棚田になった浙江省金華市武義県柳城畲(シェ)族鎮県前村(人民図片・朱翚)。
地表にある炭鉱の廃石は、ネーブルオレンジの栽培にはほとんど影響がないため、彭さんの家族は、それを全て廃棄するのではなく平らに整えてそのままにしているため、現在のような「黒い」ネーブル畑になっている。ただ以前と異なるのは、そんな真っ黒な大地に緑が見えるようになっていることだ。「今年は収穫25トンは間違いない」と、彭さんは笑顔で話す。
魏さんの会社は現在、萍郷市で約200ヘクタールの鉱山でエコ農業を展開している。源南郷政府は、財政資金による株式参入という形で、貧困を脱却した世帯に利益を配当できるようにしており、294世帯が毎年、利益配当を受けている。現時点で、萍郷市は、国や省から約4億元(1元は約 18.7円)の財政支援を受け、鉱山跡地の生態系修復を実施しており、鉱山跡地約6000ヘクタールのうち、約4000ヘクタールで生態系がすでに修復された。(編集KN)
「人民網日本語版」2022年3月22日