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時を越え古代中国の楽器を演奏する華夏古楽団

人民網日本語版 2022年05月19日14:44
時を越え古代中国の楽器を演奏する華夏古楽団
中国伝統楽器を演奏する古楽団のメンバー(写真提供・河南省文化・観光庁)。

「瑟(しつ)」は、一度は伝承が途絶えた古代中国の撥弦楽器であり、復元された今の楽器が瑟であることをどうすれば証明できるのだろうか?

2014年、中国河南博物院に所属する華夏古楽団は、韓国国立国楽院で訪問公演を行い、楽団のメンバーである袁佳音さんが、瑟を使って「楚歌」を演奏した。すると、拍手が起きる前に、ある人が上記のような疑問を投げかけたという。

袁さんは、「こうした質問が出ることはあらかじめ予想していたので、準備していたパワーポイントで、古書や壁画、出土した文化財から、弦、駒、胴に至るまで、私たちが復元と複製した際の根拠と過程を一切合切説明した」と振り返る。

華夏古楽団が立ち上げ当時から所属している袁さんは、これまで22年間、瑟を演奏し続けてきた。「元々、古筝を演奏していて、入団してから瑟を演奏するようになった。瑟の形は古筝に似ていて、駒一つと弦が数本増えただけに見えるかもしれないが、実際には、演奏方法も音色も異なるので、一から一生懸命練習しなければならなかった」という。瑟はすでにその伝承が途絶えて久しかったため、袁さんは古書を読み漁り、無形文化遺産「中州筝派」の演奏技法などと組み合わせて、少しずつ模索を重ねるしかなかった。長年の蓄積を経て、たくさんの成果を挙げており、袁さんは、学術誌に多数の論文を発表してきほか、専門書の編纂にも関わってきた。

河南博物院の馬蕭林院長は、華夏古楽団の位置付けについて、「楽団であり、研究所、学校でもある」と説明する。自分たちで楽器を作り、楽譜を探して、演奏するほか、音楽の分野の考古学研究や学術研究もするという仕事を同楽団のメンバーは22年も続けている。「来場者に見学するだけでなく、歴史を聴いてもらいたい」と馬院長。

華夏古楽団の霍錕団長は、「『古』楽団といっても、全ては『新』たに初めなければならない。普通の楽団は楽器を持って、楽譜を開けばステージで演奏を始めることができる。一方、文化財の楽器は動かすことはできないので、当楽団は自分たちで複製を作り、研究開発しなければならない。それに、楽譜は各種古書に散在しているので、自分たちで探さなければならない。時には1曲の古代の曲を演奏するために、10冊以上の古書を調べることもある。また、古代の曲で使われている『五音』を現代の楽譜に『翻訳』しなければ、演奏することもできない」と説明する。同楽団がこれまでに演奏してきた100曲以上の古代の楽曲は全て、このようにコツコツと再現してきたものだ。同楽団は現在、博物院で毎日演奏を2回行っている。祝祭日には3度演奏し、ほぼ毎回満員御礼となるという。

同楽団のメンバーは、演奏者であり、研究者でもある。馬院長は、「博物院自身は研究機関であり、古楽団も例外ではない。復元を経て、古代の楽器や楽曲を演奏するためには、学術的な厳密性が求められる。学者型の演奏家を育成したいと思っている」と話す。

華夏古楽団はこれまでに、約30種類の古代の楽器を累計で約1000点復元してきた。また、発見し、演奏してきた古代の曲は約200曲で、楽団のメンバーが発表してきた学術論文は累計で約100編、リリースしてきた著作、CDなどは約10作品となっている。

「古楽団は立派な学校で、ここにいる若者は成長が速い」と話す「95後(1995-99年生まれ)」の晏文涛さんは2018年に華夏古楽団に入団してすぐに、博物院の「宝」で、8000年以上の歴史を誇る中国最古の楽器「賈湖骨笛」を複製し、演奏する重要なプロジェクトを任されたという。「入団してすぐに、霍団長から博物院が編集した400ページ以上の書籍『賈湖骨笛』を渡された」という。非常に難しい書籍であるものの、晏さんは決してあきらめず、専門家の指導の下、骨笛を見事に復元した。

古代の楽曲を演奏するほか、古楽団は、古代の楽器でポピュラーミュージックや名曲を演奏するなど、いろんなことにチャレンジしている。こうした古代と現代のコラボレーション、中国文化と西洋文化のコラボレーションの模索は、多くの人の間で好評を博している。古楽団は最近、「ハリー・ポッター」の主題歌をアレンジして演奏し、ネット上で瞬く間に大きな話題となり、「スマホの着信音にしたいのでダウンロードリンクをアップしてほしい」との声がたくさん寄せられた。その他、演奏動画をインターネット上にアップしたり、ライブ配信を行ったりして、クラシックブームを巻き起こしている。馬院長は、「文化が生き続けることができるかは、発信にかかっている。インターネットが少しずつ私たちのメインの舞台になってきている。古楽団には常にイノベーションの遺伝子がある」と語る。(編集KN)

「人民網日本語版」2022年5月19日

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