豊子愷氏は漫画と随筆で世に知られているが、実はもう1つ、翻訳家という重要な顔もある。豊氏は生涯で30を超える各種の作品を翻訳し、翻訳作品の字数は計600万字を超える。内容は文学、美術、音楽など多岐にわたり、日本語、英語、ロシア語などの作品を手掛けた。中国新聞網が伝えた。
1960年代、豊氏は日本の平安時代の作家・紫式部の長編小説「源氏物語」を翻訳した。それ以降、日本の古典文学への興味を膨らませて、「竹取物語」、「伊勢物語」、「落窪物語」を次々に翻訳した。
今月7日、豊氏の手書きの翻訳原稿を集めた新刊「豊子愷訳文手稿」出版発表会が上海図書館で行われた。竹取・伊勢・落窪3作品の700ページあまりの翻訳原稿が原寸大で完全収録されている。発表会では、豊氏の孫の豊羽氏による講演があり、豊氏が若い時に日本へ遊学したエピソードや晩年に日本の古典文学を翻訳した時の様子などが紹介された。豊羽氏は、「中日両国は一衣帯水の隣国であり、昔から今まで、そしてこれからも、私たちは共にこのような文化的な密接な交流を絶えず前進させよう」と述べた。
在上海日本国総領事館の米田麻衣領事兼広報文化部長は、「豊氏をはじめとする中日友好に携わる人々が私たちに伝えてくれた中日の民間の友情に深い感謝と深い追憶の念を表すとともに、『豊子愷訳文手稿』が遠く海を渡って、日本でより多くの友人たちに知られるようになることを願う」と述べた。
「豊子愷訳文手稿」は豊氏のオリジナル手書き原稿をはっきり見て取れるほか、日本語原文の抜粋と和歌も掲載されていて、中日両言語を対照しながら読めるという特徴がある。また日本の国立国会図書館、国文学研究資料館、 国学院大学図書館など多くの権威ある図書館の利用許諾を得て、各館所蔵の絵巻物100巻あまりから選び抜いた挿絵が掲載され、日本の物語文学の美しさを伝えている。(編集KS)
「人民網日本語版」2023年4月11日