「パシフィック・リム」、過度の意訳が批判の的に
【中日対訳】 上映中のSF映画「パシフィック・リム」のセリフの中国語訳が“やり過ぎ”と批判の的となっている。必殺技「Elbow Rocket」の「天馬(ペガサス)流星拳」との訳が話題となったのがきっかけだが、サービス精神旺盛な訳者の賈秀●(王へんに炎)さんのユニークな訳は観衆には受け入れられなかったようだ。インターネットではさらに、翻訳の基本的なミスも指摘されている。「北京青年報」が8月5日に伝えた。
「ガーフィールド2」の字幕翻訳がセリフの大胆なローカル化の先陣を切ったのを初めとして、海外映画の字幕翻訳はここ数年、しばしば話題の焦点となってきた。最近上映となった「パシフィック・リム」は、興行収入はぐんぐんと伸びているものの、字幕の翻訳に疑念が投げかけられている。最も批判が集まっているのが、必殺技の「Elbow Rocket」の「ペガサス流星拳」との訳。想像力のあまりの飛躍に呆れた観客が非難を始めた。さらに作品中には多くの翻訳ミスがあり、元の意味と対立する箇所さえある。ハリウッド映画の大陸部での人気の高まりに水を差すできごととなった。
2011年に公開された「カンフー・パンダ2」は、中国語訳されたセリフが親しみやすいと評判を呼び、映画の人気を押し上げた。だが中国らしい言い回しが海外作品翻訳の標準スペックとなった現在、行き過ぎた翻訳に観客が反感を覚えるケースも増えている。セリフのローカル化の流れを意識した翻訳者が流行語を入れようと躍起になるのは、できあがった西洋のごちそうに中華料理の切れ端を入れるようなものである。アヒルに無理やり餌を食べさせるようなこうしたやり方に、最初は物珍しがって喜んでいた観客も、徐々に消化不良を起こし始めている。
近年の外国映画のセリフ翻訳の行き過ぎは、中国映画産業全体の環境の変化と同時に進行してきたものだ。興行収入がここ数年で急増していることを祝い、ハリウッドの6大プロダクションが次々と国内市場への参入をアピールしていることを喜ぶと同時に、現在の映画産業が功利性を強め、浮き足立っているという事実にも直面しなければならない。
映画の芸術性と商業性とは表裏一体のものであり、映画がもたらす利潤を追求すること自体に是非はないが、一方への偏りは正さなければならない。映画の翻訳は映画作りの一部であり、その第一の原則は訳の正確さである。文学翻訳のように「正確さ、伝達性、美しさ」がすべて達成できればいいのはもちろんだ。映画に親しみを抱かせるような流行語を入れることも、映画の魅力を強める手段として否定されるべきではない。しかしその運用は、映画の純度を保つことのできる範囲に限定するべきだ。過度の娯楽化や商業化の傾向は、映画産業全体にダメージを与える要素となりかねない。
過度の商業化は実際、映画産業の頭上に吊るされたダモクレスの剣であるだけではない。外国文学の翻訳の質もかつて、読書家を失望させる問題として話題となった。セリフ翻訳に関しては、映画ファンの期待が裏切られることのないよう願いたいものである。(編集MA)
「人民網日本語版」2013年8月9日