日本の伝統と現代を融合させた「宮崎駿」という巨匠 (2)
中国メディアが見る日本 ■日本の伝統と現代が融合した宮崎作品
宮崎監督がこのような成功をおさめられたのは、独特な芸術性による所が大きいだろう。彼の作品には、グローバルな精神性があふれているだけでなく、独自の東洋的な視点が備わっている。もしかしたら、日本では伝統と現代文化が共存していることに影響されているのかもしれないが、宮崎作品のテーマの由来はバラエティーに富み、アニメキャラクターの設定も非常にこまやかだ。
宮崎アニメが表現する日本の「民族化」を美化している傾向を指摘する人がいる。確かに、彼は非常に日本の伝統的な民族モチーフのアニメカラーを使うことにたけている。ストーリー転換を通して、主人公の心理を表現する。たとえば、「千と千尋の神隠し」では千とほかの女の子が働くときに着ているのは赤い伝統的な民族衣装で、侍女たちも和服を着ており、観衆はストーリーの中に出てくる服装の色彩やシーン、小道具に日本の民俗や民族文化の特徴をはっきりと見出すだろう。
宮崎作品はアジア人の静かな生活にある美しい瞬間を正確にとらえ続けてきた。「となりのトトロ」のストーリーの背景には大自然の息吹にあふれた日本の田舎の風景が描かれている。みずみずしい青い空、そこが見通せるほど透き通った小川、その美しさは人々が理想に描くこの世のものとは思えない桃源郷だ。しかも「トトロ」のストーリーが見る人の心に親しみを感じさせるのは、子どものころに必ず経験したことだからだ。宮崎監督はこうしたおぼろげな記憶を「トトロ」と出合うものがたりとすることで、詩のような言葉、情景で生き生きとした夢のような精神世界を描き出した。
宮崎アニメには、民族と多様な文化の融合が満ちている。作品によく出てくる島国の地形、樹木が生い茂る山々、様式がはっきりしている木造建築などは、すべて日本的なものだ。「平成狸合戦ぽんぽこ」に出てくる奇怪な化け物が街を練り歩くシーンには、日本に根強く残っている素朴な神話観がみられる。(訳者注*この作品は宮崎監督作品ではない)
まねできないといわれる宮崎アニメの造形美の理由には、作品に出てくる建築の多くが純粋な日本風ではないことがあるだろう。作品に出てくる建築物の多くは純粋な日本風の建築物ではない。「千と千尋の神隠し」に出てくる湯屋、「ハウルの動く城」で描かれた城もほとんどが日本特有の民族文化と世界の著名な建築物が融合した産物だ。
宮崎駿監督はイタリア文化をこよなく愛していて、若いころには何度もヨーロッパを訪れ、興味を感じた現地の建築物をデッサンして記録していたものが素材になっているといわれている。
自然を崇拝しているといえども、現代文明の美しさも宮崎作品には不可欠の要素だ。「千と千尋の神隠し」で描かれる美しく幻想的な会場列車は現実に、実際存在するものだ。
また、宮崎アニメは日本だけをストーリーの背景にしているのではない。物語自体やストーリーの中に描かれている民俗や習慣はよくどこの国や民族を描いているのかわからないことがある。もしかしたら宮崎監督の多元的な審美眼を表現したものなのかもしれない。