日本の伝統と現代を融合させた「宮崎駿」という巨匠
中国メディアが見る日本 現地時間9月1日、イタリアのベネチアで現在上映中の作品「風立ちぬ」を最後に、宮崎駿監督(72歳)の引退が発表された。このニュースを聞いた映画ファンからは惜しむ声が上がっている。宮崎駿監督は、世界的に著名なアニメの巨匠であり、その作品の芸術性は日本の民族的な伝統文化と現代文明が絶妙に融合しており、ストーリーは美しい情感、希望や人間性を描きだし、世界中のアニメファンから賞賛されている。中新網が伝えた。
■独特な主題表現と人物描写
宮崎駿監督の作品はお決まりのパターンで、困難な中での頑張りや不屈の闘志がテーマとして描かれているようにみえるが、宮崎作品の独特なところはすべての作品が描かれているストーリーの次元にとどまらず、夢、生きること、成長など人に考えさせられるなにかが含まれているところにある。
日本のほかの有名監督と比較すると、宮崎作品の最も顕著な特徴はさまざまな「精霊」のキャラクターだ。これらのキャラクターが一緒になって宮崎アニメの大きな特徴となっている。「精霊」キャラクターたちは人類と大自然のつながりであり、寡黙で、孤独で、センチメンタルな感じが画面を通して伝わってくる。たとえば「千と千尋の神隠し」における「まっくろくろすけ」、「もののけ姫」の「木霊」は、臆病でいくじがなくびくびくしながら人に群がり、静かに欲望に満ちた現実世界を見つめるのだ。
実際、アジア諸国の多くの伝統文化には自然の精霊を崇拝し、万物の調和を追求する価値観が存在している。だが、現代文明が力を持つにつれ、こうした価値観を持つ人々も次第に現実に同化していった。宮崎監督はもしかしたら、最後のこころから「自然」を信奉する最後のアニメ監督だったのかもしれない。こうした自然な発露の生きとし生けるものへの「平等な尊敬」が、宮崎作品全体の美しいフレームワークを構築し、異なる国や民族をも強くひきつけたのかもしれない。
独特な主題の表現以外に、宮崎アニメのキャラクターは米国式のスーパーヒーローではなく、どこにでもいるような普通の少年少女だ。こうした「普通のキャラクター」は性格が善良で単純、心がきれいで、多くの人の共感を引き出しやすい。「天空の城ラピュタ」の「シータ」や「となりのトトロ」にでてくる「メイ」と「サツキ」、「千と千尋の神隠し」の「千尋」などがこれにあたる。