右傾化する一方では日本は方向を見失うことに (3)
■失うものの方が大きい努力
多くの日本人にとって、安倍晋三氏の優れている点は20年の長きに及ぶ重苦しい苦境から国を抜け出させようとし、世界第2位だったこの経済大国の国際社会における地位を回復させようと努めていることにある。
安倍氏の戦略は実際のところはっきりしている。つまり「右」の努力を通じて票を集めることで政権の座を安定させ、走馬燈のような内閣交代の悲劇から抜け出して、自らの壮大な青写真(つまり日本を戦後秩序から抜け出させる)に実現の可能性を残すことだ。
だが政治意志主義と民族主義の大げさな美辞麗句の結合の代償は、隣国との関係の持続的緊張だとある政治アナリストは指摘する。右翼の有名な代表である安倍氏は、中韓との領土問題や歴史解釈において、日本人は過去に止まって懺悔と謝罪を続けるわけにはいかないとの考えをずっと持っている。そこで憲法改正と否定主義が安倍氏の信条となった。
このようなやり方は散々批判されている。マックス・ウェーバーの弟子、カール・レーベンシュタインは「民衆が憲法に関心を持つのが良いこととは限らない」と述べた。半世紀前、日本の内閣憲法調査会の矢部貞治副会長は「改憲勢力が三分の二を占めたというだけで改憲できるものではない。憲法に多少の不備や欠陥があっても、それで国が滅んだ例はないが、改正を強行することで国内を分裂に導いた例はある」と述べた。
否定主義はかつてその被害を受けた隣国を傷つけただけでなく、同盟国である米国も立腹させた。米韓関係を損ねることは日本の首相が「米国の利益と相反する」ことも意味するからだ。