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ノーベル文学賞受賞者・カズオ・イシグロの中国語版、書店に出揃う

人民網日本語版 2018年09月26日10:29

「壮大な感情の力を持った小説を通し、世界と結びついているという、我々の幻想的感覚に隠された深淵を暴いた」。これは、2017年度ノーベル文学賞を受賞した日系イギリス人小説家であるカズオ・イシグロの作品に対するスウェーデン・アカデミーの評価だ。上海訳文出版社は昨年、カズオ・イシグロの3作品の中国語版出版の権利を獲得後、ハイレベルな翻訳者と編集チームを選出し、翻訳と編集に取り組んできた。そして、カズオ・イシグロの中国語版の作品がこのほど全て出版された。北京日報が報じた。

中国語版で出版されたカズオ・イシグロの作品は、「遠い山なみの光」と「充たされざる者」、「浮世の画家」、「夜想曲集―音楽と夕暮れをめぐる五つの物語」、「忘れられた巨人」、「わたしたちが孤児だったころ」、「日の名残り」、「わたしを離さないで」の8作品。上海訳文出版社が刊行した最後の2作品「日の名残り」と「わたしを離さないで」は、中国語タイトルが「長日留痕」から「長日将尽」に、「別譲我走」が「莫失莫忘」に変更された。この点について、カズオ・イシグロの作品の中国語版を企画し、「日の名残り」を翻訳した馮涛氏は、「カズオ・イシグロは、儚さの中に情緒を感じさせる作風。『日の名残り』では最後に、主人公が海辺の村である見知らぬ人と言葉を交わし、『夕方が一日で一番いい時間だ』と話す。夕陽は限りなく素晴らしいが、もうすぐそこまで黄昏の闇が近づいている。だからタイトルでは『尽』を強調したほうが、『留痕(跡を残す)』を強調するよりも、彼の表現スタイルに合っていると思う」と説明している。

「日の名残り」は1989年にブッカー賞を受賞し、同名の映画を見たことがある人も多いだろう。同作品は、不遇のうちに世を去ったかつての主人や失われつつある伝統に思いを馳せ涙を流す「執事」を通して、帝国の衰退を描いている。また、「カズオ・イシグロの作品の中で最も感動させられる作品」というと、馮氏は、「わたしを離さないで」を挙げ、「同作品の作風はとても細やかで、主人公のクローン人間の切ない回想を通して、強い感情を表現し、命の意義について考えさせられる」と語る。

日本の作家・村上春樹は、カズオ・イシグロの作品のファンで、「ここ半世紀の文学作品の中で、僕は『わたしを離さないで』が一番好き」と絶賛し、「カズオ・イシグロの小説は、とても、率直で誠意があり、やさしさもある。とても親しみやすく、自然だ」と評価していることは注目に値する。(編集KN)

「人民網日本語版」2018年9月26日

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