そんな流れで始まった「わたし、定時で帰ります。」の初回では、「出世とか考えてるように見えます? 9 時6時で帰って小籠包食べてる時のほうが幸せです」や「会社だけの人間になるな。人生を楽しめ。色んな人と会え。世界を広げろ。そういう積み重ねがいい仕事を作る」、「会社のために自分があるんじゃない。自分のために会社があるんだ」などの名言が次々に飛び出し、中国の若者の心を捉えている。うれしそうに定時に帰り、半額のビールを飲む東山を、それら若者が羨望のまなざしで見ているのは間違いない。
4月6日から放送が始まった「きのう何食べた?」の主人公・筧史朗も東山と同じく、目立つことは好まず、毎日定時に帰り、近所の安売りスーパーへ向かい、吟味した食材でゲイのパートナーのために夕食を作るというのが日課だ。
一方で、仕事に没頭し、毎日残業をするエリート男性も、依然として日本ドラマによく登場する。例えば、今年1-3月に放送された「初めて恋をした日に読む話」に登場した八雲雅志は東大を卒業した「できる男」で、女性の心をつかんだ。毎日のように残業する姿、一生懸命努力する姿、いつも仕事をやり遂げるその能力、やる気が人気となった理由だ。
東山と八雲を比較してみると、二人の間には価値観の大きな違いがあることが分かる。八雲にとって、仕事とは自分の生きがいで、ハードであっても仕事を通して達成感を得ている。日本特有の経営家族主義、会社に対する忠誠、会社に恩返しをするという考え方のほか、自分の生きがいを見つけるというのも、仕事に没頭し、残業を当然とみなす、日本の人々の心の底にある信念だ。一方の東山にとっては、自分の生きがいとは仕事ではなく、余暇の時間に自分のしたいことをして楽しみ、視野を広げ、好きな人と一緒にいる時間を大切にし、充実した人生過ごすことだ。