日本でミステリー映画が大人気の理由は? (3)

人民網日本語版 2019年04月29日11:34

▽ジャンルの融合とバージョンアップ——複雑な社会の現実を物語の中へ

ミステリーは昔からある映画のジャンルで、真剣で、緻密的、内省的、優雅といった特徴をもつ。ストーリーの中心はまとまりのある、密接に関連した事件の謎解きプロセスで、厳密な推理を展開するにはストーリーが一体感をもち、プロットが絡み合う必要がある。理性的で論理を重んじるという作風から、視覚的には単調なものになりやすい。また観客も謎解きに参加し、思考プロセスをたどるため、テンポがゆっくりになりがちだ。

こうしたわけで、日本の映画界は本格派より社会派のミステリーを好み、松本清張、東野圭吾、伊坂幸太郎などの作品の多くが映画化されてきた。「砂の器」や「容疑者Xの献身」などは何回も映画化されている。なぜなら、こうした作品は感情や人間そのものを描いており、人間ドラマが観客を引きつけるからだ。

また現在主流の商業映画はアクションシーンや視覚的効果を重視する傾向があり、理性的で、知的なミステリーは時代遅れになってしまった。現代の観客は視覚的により刺激的で、テンポも速い商業映画をより好む。そこでミステリー映画の新たな発展の可能性として、アクションやサスペンスなどの視覚的効果をねらいやすいジャンルとの融合が現れている。こうしたジャンル融合型の現代的ミステリー映画は、犯罪映画、ホラー映画、アクション映画などさまざまなジャンルの要素を取り入れている。

ここから、ミステリー映画というジャンルの日本での発展繁栄ぶりには独自の原因があることがわかる。最も人気のある社会派ミステリー映画は、犯罪の動機を追及し、人物を描き出すことに主眼が置かれ、社会の現実、人間の欲望を架空の物語の中で描ききる力を商業映画に与えている。人間と犯罪が交錯するモデルがワンパターンに陥ることはあるが、推理プロットの緻密さ、登場人物の描き方の深さ、描かれた社会の現実のリアルさなどが、アクションやコメディなど他のジャンルの多くの商業映画には到底及ばない魅力をミステリー映画が備えている。

こうした理由から、ミステリー映画には視覚的に弱い、テンポが遅いなどさまざまな欠陥がありながら、社会派ミステリー作品ではそれがかえって強みになり、ミステリー映画を現代の日本文化の中で最も生命力にあふれた文化的リソースへと押し上げている。(編集KS)

「人民網日本語版」2019年4月29日

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