中国軍事科学院が開発した組換え新型コロナウイルスワクチンの進捗状況はどうなっているのだろうか。このワクチンにはどのような特徴があるのだろうか。3期臨床試験に成功した後、大規模な市販までどのぐらい時間がかかるのだろうか。どのような人が接種に向いているのだろうか。ワクチンは変異後の新型コロナウイルスに対して予防効果を持つか。中国のワクチン開発の進展は現在、世界でどのような位置付けなのだろうか。これらの問題をめぐり、筆者はこのほど「人民英雄」国家栄誉称号を授与された中国工程院院士で、軍事科学院軍事医学研究院研究員の陳薇氏の単独取材を行った。新華社が伝えた。
◆軍事科学院が開発する新型コロナワクチンの特徴は?
陳氏:これは先進的な技術を持つウイルスベクターワクチンだ。液性免疫(抗体と中和抗体)と細胞性免疫を兼ね備えるのが際立った特徴だ。ウイルスが寄生虫のようなもので、自ら成長・繁殖できず、人体の細胞内で繁殖する必要があるため、細胞性免疫はウイルスの予防・抑制にとって極めて重要だ。我々は3月16日に世界初の1期臨床試験を展開し、5月22日に1期臨床試験のデータをランセット誌に発表した。接種を受けた108人の全員に抗体ができた。我々は7月20日、世界に向けて2期臨床試験のデータを初公開した。3期臨床試験は現在、効果的に推進されている。中国国内で感染状況が効果的に抑制されたため、我々は海外で3期臨床試験を推進し、より大規模なワクチンの有効性・安全性評価を行う必要がある。
◆3期臨床試験に成功した後、市販までかかる時間は?
陳氏:一般的に言えば、あるワクチンの開発は3期の臨床試験を行い、試験結果が関連する条件を満たした後、量産化の準備に入る。しかし我々の組換えワクチンは1期臨床試験の段階で、量産化の準備を始めていた。現状を見る限り、年間3億本の目標は達成可能で、我々は生産能力の拡大に取り組んでいる。3期試験の結果が出た後、生産能力もそれに追いつき、いつでも人々の大規模接種を行えるよう技術の準備を整える。
◆組換え新型コロナワクチン、接種後の有効期間は?
陳氏:新型コロナウイルスが分離されてから現在までまだ半年余りで、ワクチンの有効期間がどのぐらいあるかに関するデータは世界でも少なく、いずれも1年内のデータだ。我々のワクチンは3月に世界で最も早く1期臨床試験に入っており、現在までも我々には半年内のデータしかない。現状を見る限り、3月のワクチンはまだ有効だ。その有効期間がいつまで続くかについても関連する研究を進めている。現時点では、過去の類似するワクチンに基づき推測するしかない。例えばエボラウイルスワクチンだが、1回目の接種から6カ月後に免疫反応が弱まるが、6カ月前後で2回目の接種を行うことで強化すれば2年は有効だ。これは参考データになる。
◆ウイルスに変異が生じれば、ワクチンは無効になるか?
陳氏:これは遺伝子工学ワクチンで、最も役に立つ遺伝子の部分を見つけ、これをワクチンにする。現在のデータから分析すると、我々が選んだ遺伝子の部分に変化が生じる可能性は非常に低い。我々の組換え新型コロナウイルスワクチンは、現在まで変異が生じている新型コロナウイルスを完全にカバーできる。
またこれが遺伝子工学ワクチンであるため、変異が生じて予防効果に影響が生じた場合、現在のワクチンを基礎免疫とし、すぐにより的を絞ったワクチンを作り免疫を強化できる。これはソフトウェアのアップデート、パッチを当てるようなものだ。これは世界の多くの国が遺伝子工学ワクチンを作っている理由でもある。これは次世代の技術であり、今後発展に取り組むべき発展途上の技術だ。
◆中国のワクチン開発の進捗状況、世界ではどのような位置付け?
陳氏:中国が世界の新型コロナウイルスワクチンの開発の先頭集団にいることは間違いない。世界保健機関(WHO)が発表した、3期臨床試験に入ったワクチンのうち、中国は過半数を占めている。このデータはこの問題を十分に物語っている。(編集YF)
「人民網日本語版」2020年9月8日