日本政府がこのほど、東京電力福島第一原子力発電所の放射能汚染処理水を海洋放出すると決定したことが、広く注目を集めている。新華社が伝えた。
日本が採用するALPSの処理効果はどうなのか?
中国原子力エネルギー業界協会専門家委員会の趙成昆常務会長は、「日本の現在の福島原発事故で出た汚染水の処理方法は、主に2012年に開発された多核種除去設備(ALPS)によってトリチウム以外の放射性物質を濾過するというものだ」と説明した。
2020年2月10日、日本の福島原発事故汚染水の処理を検討する「ALPS小委員会」が発表した報告書によると、19年12月31日時点でALPSで処理した汚染水の73%がまだ日本の排出基準を超えていたという。また東京電力が発表したデータでは、ALPSが稼働してから現在までの間に、濾過後の汚染水の中のヨウ素129などの放射性物質の濃度が引き続き基準値を超える状況がたびたび出現し、効果は期待されたほどではなかったという。こうしたことからわかるのは、技術的に実行可能でも、予定された工程が完全に実現できるとは限らないし、長期的に安定した稼働を維持できるとは限らないということだ。
同時に、日本の福島原発事故汚染水の処理の実施主体は東京電力だ。同社は原発の安全な運営をめぐって何度も不祥事を起こしており、福島の事故の前にも後にも虚偽の報告や情報の改善という「前科」がある。公開された報道内容によると、東電は07年に、1977年から福島第一原子力発電所と福島第二原子力発電所などで行なってきた199回にわたる定期検査で測定データを改ざんし、原子炉の故障を隠匿したことを認めた。福島の事故に続く処理の過程では、さまざまな理由を設けて対応を遅らせてきた。このような状況で、処理された汚染水が本当に排出基準をクリアしているのかどうか、疑問符がつくのは当然だ。
原発事故汚染水は生活廃水と同じ?
ネットユーザーの中には福島原発事故の汚染処理水と世界各国の原発の正常な稼働で排出される廃水とを同列に論じる人もいる。これについて、生態環境部(省)原子力・放射能安全センターの劉新華研究員は、「原発の正常な稼働で排出される廃水を、私たちは『原発の正常な稼働による液体廃棄物』と呼んでいる。日本の福島原発事故の汚染処理水とは本質的に異なる」と述べた。
異なる点は主に3つある。
第1に、出どころが異なる。日本の福島原発事故は国際原子力・放射線事象評価尺度(INES)で最も深刻な事故とされる「レベル7」に相当し、炉心溶融(メルトダウン)して損壊し、放射性物質が大量に放出された。原発事故の汚染水は事故の後で溶融した炉心を冷却するために注入された冷却水と、原子炉に流れ込んだ地下水・雨水だ。原発の正常な稼働による液体廃棄物とは主にプロセスで出た排水、化学的排水、地面から出た排水、シャワー・洗濯などで出た排水などだ。
第2に、放射性核種の種類が異なる。福島原発事故の汚染水には溶融した炉心に存在する各種の放射性核種が含まれ、その中には半減期の長い一部の核分裂性物質、毒性の非常に高いプルトニウムやアメリシウムなどの超ウラン核種が含まれている。原発の正常な稼働による液体廃棄物は燃料棒と直接接触することはなく、少量の核分裂性物質を含むが、超ウラン核種を含むことはほぼない。
第3に、処理の難度が異なる。日本はALPS技術を採用して福島原発事故の汚染水を浄化処理するが、最終的に排出基準をクリアするかどうかはさらに検証が必要だ。原発は国際的に通行する基準を厳格に遵守し、最良の実行可能な技術を採用して汚染水の処理を行ない、厳格なモニタリングを行なって基準をクリアした後に組織的に汚染水を排出し、排出後の放射性核種は規定のコントロール値をはるかに下回る、というプロセスをたどる。(編集KS)
「人民網日本語版」2021年4月20日